首位の熊本をホームに迎えたYS横浜だが、開始から主導権を握る。前半だけで、シュート本数でも12本対5本と圧倒。CKから先制したかに見えたがオフサイドの判定に泣いた後、先制を許すも河野諒祐のアシストから同点に追いつき、後半には一時逆転。最終的に引き分けたが、首位相手に一歩も引かなかった。
上写真=河野は熊本戦でも攻撃的な姿勢を貫いた(写真◎J.LEAGUE)
■2019年7月7日 J3リーグ第15節
YS横浜 2-2 熊本
得点者:(Y)進昂平、西山竣太(熊)高瀬優孝、鈴木翔登
サイドの攻防で受けに回らず
熊本の左サイドバックである高瀬優孝は、ウィングのようにタッチライン際で高い位置を取っていた。試合前から「相手のストロングポイントだと分かっていた」と河野諒祐は話したが、前線から果敢にプレスをかけるYS横浜だけに、同じサイドとなる右サイドバックとしては「多少のやりづらさはあった」。その高瀬のクロスがゴールに吸い込まれた23分の失点は事故のようなものだったはいえ、河野は自分のサイドから奪われた得点に気分が良かったはずはない。
それでも河野は、下を向かなかった。先制点被弾の10分後、「(高瀬が)前に出てくるので、その後ろのスペースを使おうと思っていた」との言葉通りにボールを受けると、相手DFの股下を抜くワンツーパスを試みる。ボールは相手の足をかすめたが、自身は足を止めずに前へ出る。信じた通りに戻ってきたボールを受けると、速いクロスを雨に濡れる芝に滑らせて、「あのシーンは自分の良さが出た」と同点弾をアシストした。
後半半ばを過ぎた70分には、河野がピッチ中央に進出してパスをカットし、攻撃の起点となる。こうして右サイドから始まった仕掛けがボックス前を横切ると、最後は左サイドバックの西山竣太がノートラップで左足を振り、熊本GKが一歩も動けない見事な一撃を逆サイドのゴール右上に突き刺した。
河野は同点アシストの後、前半終了間際にもゴール前へと持ち上がり、枠のわずか右に外れる惜しいシュートを放っている。「あそこは決めないといけなかった」と、どん欲にゴールを目指し続けた。
今季初の引き分けで、順位を1つは上げたもののまだ15位というYS横浜だが、得点数はJ3で4位タイ。今季からチームを率いるシュタルフ悠紀リヒャルト監督の下、プレー強度も上がるなど個々の成長も示しつつ、この日も首位相手に内容で上回った。その成長ぶりに、シュタルフ監督も「想定内であり、想定以上」と手応えを語る。河野らサイドバックが絡んだこの日の2得点も、築き上げているスタイルと成長の象徴に映った。
河野自身は下部組織で育った湘南ベルマーレで順調に昇格していったものの、ルーキーイヤーにリーグ戦1試合に出場しただけで、J3の福島ユナイテッドへ期限付き移籍。さらにJFLへと戦いの場を移したが、昨年に再びJの舞台へ戻ってきた。昨季に続き主力として戦い、「ここで止まらないで成長を続けていきたい」と語る24歳。今季、クラブの「やってやろうぜ!」とのスローガンのままに、後半戦に入ろうとするシーズンを突っ走っていく。
取材・文◎杉山孝