新たな所属先がどこになるのか、連日のように報じられている注目のプレーヤー、日本代表のMF鎌田大地は高校時代、どんな選手だったのか。先ごろ発売となった『ブレない信念――12人が証言する サッカー日本代表 鎌田大地の成長物語』(森田将義・著/ベースボール・マガジン社・刊)からエピソードを抜粋して紹介する(第2回)。

1、2年生のチームでの快挙

 選手権出場は逃したものの、チームはプリンスリーグ関西で3位に入り、高円宮杯U-18サッカープレミアリーグ参入戦行きの切符をつかんでいた。そのため、選手権予選で負けてからも活動を続けた。ただし、選手権出場という大きな目標を達成できずにモチベーションを失った3年生は、高校サッカーから引退することにした。つまり、1、2年生のチームでプレミアリーグ昇格を目指すことになったのである。選手権に出られなかった悔しさはあったが、残った下級生たちは、自分たちの代で挑めると前向きな気持ちで臨んだ。4チームで争ったトーナメントは厳しい戦いが続いた。GK蔦颯(現在はヴァンラーレ八戸)や2年生ながらもエースナンバー14を背負うMF鈴木徳真(現在はセレッソ大阪)を擁する本命の前橋育英高校(群馬県)、選手権で4度の優勝を数える古豪の藤枝東高校(静岡県)、さらには帯広北高校(北海道)と難敵がそろっていた。

 1回戦は延長戦にもつれ込んだが、先制点と3点目を奪った大地の活躍により、3-1で帯広北を振り切った。決勝(2回戦)の相手は藤枝東高校。年代別代表に選ばれていたGK長沢祐弥(現在は東京ヴェルディ)が、守護神として君臨していた。

「(藤枝東高校が)1回戦で前橋育英にPKで勝った試合を映像で見ましたが、これを子どもらに見せたらアカンと思うくらいレベルが高かったんです。実際にホテルで見せませんでした」(東山高校・福重良一監督)

 実力差がそれほどあり、事実、立ち上がりから押し込まれる時間が続いた。しかし、粘り強い守備で失点を回避し、迎えた後半27分に先制ゴール。自陣からのFKのボールに対し、大地がヘディングで競り勝った。大地はこぼれ球を拾ったチームメイトからのリターンを受けたあと、落ち着いてゴール右隅に決めてみせた。さらに、試合終了間際に追加点が生まれた。大地のパスがきっかけとなり、ダメ押しの2点目。そのまま、2-0でタイムアップの笛が鳴った。

「3年生のプレミアリーグでも点を結構取りましたが、あのとき(プレミアリーグ参入戦)が一番喜んでいるように見えました」(東山高校時代のチームメイト・中村太郎)

 1、2年生のチームでのプレミアリーグ昇格は快挙と言っていいだろう。しかし、福重には、喜びとともに少しばかりの後悔などがあった。

「藤枝東はそのあとの選手権で京都橘と当たることになっていました。ですから、(同じ京都勢である)東山の1、2年生チームには負けられないというプレッシャーがあったと思います。やりにくさが絶対にあったでしょう。

 万が一のことがあるとは考えていましたが、組み合わせを見たときはいけるとは思いませんでした。うれしかった一方で、3年生が一緒だったら、また違う成長があったかもしれないと今でも考えます。それと、下級生だけでプレミアリーグにいけたので、自分たちの学年は強いんだと勘違いした部分がありました」(福重) <続く>

文◎森田将義


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