試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、久保建英は埼玉スタジアムのピッチに顔をうずめて号泣した。8月6日、東京オリンピックのサッカー男子3位決定戦で日本はメキシコに1-3で敗れて、4位で大会を終えることになった。久保はこの敗戦を「重い」と表現した。その重みはしっかりと未来につなげていく。

上写真=久保建英は敗戦を告げるホイッスルが鳴ると号泣。この大会にかけた思いの強さがこぼれた(写真◎Getty Images)

「いままでサッカーやってきてこんな悔しいことはない」

 涙は止まらなかった。泣いても泣いても泣いても、久保建英は体全体で泣いていた。

 8月6日、東京オリンピックの3位決定戦。メキシコを相手に1-3で敗れて、目の前にあった銅メダルがこぼれ落ちた。試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、ピッチに突っ伏して号泣し、なかなか立ち上がることができなかった。

「今日、勝つと決めてきて、グループリーグで勝っていた相手だったので、結果論ですけど気の緩みがあったかもしれないですし」

 試合直後のフラッシュインタビューでも、涙を隠さずに絞り出した。

 この大会は久保の輝きが存分に日本を照らしていた。グループリーグでは3試合連続ゴール。しかも、南アフリカ、メキシコ、フランスとすべてで、その試合の最初のゴールをたたき出して、自慢の左足で試合を動かしてきた。準々決勝のニュージーランド戦、準決勝のスペイン戦、3位決定戦のメキシコ戦ではゴールこそならなかったが、攻撃の中心として与えられた信頼を上回るプレーを披露した。

 最後のメキシコ戦では疲労の影響は当然ながら見られたものの、25分には左サイドでキープして相手を誘っておいてから、巧みに相手の股を通すパスを相馬勇紀に送ってシュートを導いた。28分には右の角度のないところからのFKに、鋭い軌道でニアに蹴って、クリアされたもののゴールを脅かした。前半終了間際には一気に中央から右にロングダッシュ、堂安律から縦パスを引き出してゴールに迫った。64分には右からカットインして逆サイドの三笘薫に送り、自慢のドリブルを促した。71分には右サイドから運んで中央に送り、堂安にシュートを打たせた。そして、78分にはまたも右から中央に運んでいってから逆サイドに振ると、三笘が鮮やかな切り返しから突破して左足で蹴り込んでついにゴール。しっかりとアシストを記録した。

 それでも、負けたことが悔しくて悲しくて仕方がない。

「相手も疲れている中で3点を取られて、こっちは1点しか取れなくて試合が終わって、こんな悔しいことはないし、ちょっと……きついですね」

 3位決定戦までのデータでは、久保が全選手の中で最も多い通算21本のシュートを放っている。ゴールへの意欲が数字でも表れた。

「負けたので、次のチャンスが自分にあれば、しっかり勝利に貢献できるようにしたいですけど、今日の負けは重いなと思います」

 この6試合が、スペインとメキシコに喫した黒星が、20歳の左利きのミッドフィルダーに何を残しただろうか。それが、日本サッカーの未来につながることを誰もが期待する。

「めちゃくちゃ楽しかったですけど、結果、手ぶらで自分の家に帰ることになりますし、いままでサッカーやってきてこんな悔しいことはないし………、この気持ちを忘れないようにできればなと思います。ありがとうございました」

 すすり泣きとともにしっかりと残した言葉は、ずしりと重みを持って広がった。

 全6試合、525分に出場して、3得点1アシストで4位。背番号7を身に着けて戦った久保の東京オリンピックは、その数字の奥にあるさまざまな体験を刻んで幕を閉じた。


This article is a sponsored article by
''.