上写真=65分からピッチに入った相馬勇紀。気迫のプレーを見せたが、勝利はつかめなかった(写真◎Getty Images)
最後の質の差を感じた
左から果敢に仕掛けてクロスを上げ、ボールを運んで相手のファウルを誘った。65分に旗手怜央に代わって出場した相馬は何度も何度もスペインゴールをこじ開けようとチャレンジした。そして守備局面になれば、素早く自陣に下がってスペースを埋め、相手の攻撃を阻むために力を尽くした。
しかし、ネットを揺らせず。そして115分には自陣左サイトのスローインからパスをつながれ、アセンシオに決勝ゴールを決められた。
試合後の公式会見に森保監督とともに出席した相馬は絞り出すように言葉を紡いだ。
「試合を思い出しているんですけど、なかなか色々なシーンが思い出せなくて…やっぱり監督も仰っていましたが、最後のクオリティーというところの差が、世界で勝てるか勝てないかの差だと僕は実感しました」
守備の時間が長くなったが、チャンスがまったくなったわけではない。久保建英のシュートや前田大然のヘッドなど、相手ゴールに迫った。そして相馬自身もボックス内に何度かドリブルで進入した。
「今、覚えている光景として…最後、アセンシオ選手がターンして左足で1本、巻いて決めたシュートはすごく鮮明に残っていて。それに対して自分は途中から(試合に)出た中で、クロスを上げるところまで、ゴールの近くまでは行ったけど、やっぱり最後の球がどうしても通らない、相手に当たってしまう。チャンスは同じくらい作れていたかなと思っていたんですけど、最後のクオリティーの差というところに勝ち進めるか進めないかの差を感じました。本当に悔しいです」
ラストパスが通るか。クロスが届くか。シュートが枠をとらえるか。相馬が実感した差は、大きな差となって結果につながった。
だが、3日後には3位決定戦が待っている。敗戦を引きずっているわけにいかない。相馬は前を向いた。
「銅メダルを取るために、心と体の整理が必要だと思います。今はまだ悔しい思いが残っていて、整理ができていない状況なので、まずは気持ちのところを整理したい。その中でも負けた試合には必ず敗因があって、どこが足りなかったのか、どのプレーは良かったのか。そういった一つ一つに目をつぶってはいけないと思うので、この悔しさをしっかりと整理して、そしてこの試合に何が足りなかったのか、どうしたら勝てたのかというところを考えて、向き合って、今日の悔しさをチームと個人の力に変えて戦っていきたいと思います」
最後は笑って終わりたい。それは大会前に誓った思いを実現するためでもある。
「もう現実的に金メダルは取れないですけど、メダリストになって(終わりたい)。僕はこのオリンピックが始まる前に日本のみんなを笑顔にしたいということを思って戦い始めました。絶対にメダルという結果をもって、今できる最大の…、日本に元気を与えて笑顔にしたいと思います」
日の丸を背負う選手として。多くの協力の中で舞台に上がった責任として。相馬はメキシコとの3位決定戦に臨む。