上写真=準備試合では4戦連発の好調ぶりを見せた堂安律(写真◎JMPA)
文◎川端暁彦 写真◎JMPA
「本番でもフィニッシャーとしての役割を」
2017年5月21日、韓国・水原市にて日本は南アフリカと対峙していた。10年ぶりの出場となったU-20ワールドカップの初戦だった。
この日のピッチに立ったのは、堂安律、三好康児、久保建英、中山雄太、板倉滉、そして冨安健洋。三好を除くと全員が初めての世界大会ということもあり、明らかに硬かった日本は開始早々に失点し、以降もなかなか流れがつかめず。しかし後半、見事な逆転勝ちを収めることとなる。
決勝点は縦パスを受けた堂安がワンタッチではたいたボールを久保がこれまたワンタッチで折り返し、さらに堂安がワンタッチでの左足シュートを蹴り込むというもの。「タケ(久保)とはあれができる。練習からやれていた」と堂安が笑顔で語っていたとおり、2人の技術とイメージが噛み合って生まれた見事なゴールだった。
あれから4年の歳月が流れたが、2人がA代表に名を連ねるようになり、戦いのステージを欧州に移した現在も、ピッチ上で見せる不思議な感覚の共有感は変わっていない。
「お互いに特に話をしていなくとも、タケに預ければボールが帰って来るとか、タケに預ければチームにプラスなことをやってくれると信頼しているし、逆にそういう信頼を彼から僕も感じるので。話さずとも、共通認識できていると思う」(堂安)
最後の準備試合となった17日のスペイン戦でも、久保のクロスから堂安がフィニッシュという形が見られたが、これは「あえて空けておいた」スペースに入っていく形で生まれている。こうしたワンタッチゴールに繋がるようなセンスの良さは、U-20W杯の南アフリカ戦でのものが象徴する通り、元より堂安の持ち味である。ただ、本人のフィニッシャーとしての自覚が強まったことで、より明確な武器となってきている。
「やっぱりパスが回ってくるので、自分はフィニッシャーを務められる。ほとんどのゴールがワンタッチなので、ワンタッチで打てる位置に入って来られているのは意識の変化と、感覚の良さかな、と。説明は難しいけれど、まさに感覚で、『ここに来そうだな』とか、『ここにフラッとしていれば、ボールがこぼれてくるな』という感覚がある」(堂安)
堂安は昨季のブンデスリーガでのプレーを通じて一つの殻を破った印象もあるが、その真価は22日から始まる東京五輪で示されることだろう。「本戦でもフィニッシャーとしての役割を果たしたい」とキッパリ語る日本の10番に期待されるのは、分かりやすく「ゴール」ということになる。