上写真=南アフリカ戦に向けてトレーニングする吉田麻也キャプテン(写真◎JMPA)
文◎林 遼平 写真◎JMPA
選手の実力はある、だからこそ…
まだ涼しさも感じられた静岡での事前合宿から、大阪、神戸での試合を経て、関東に戻ってくると酷暑が待っていた。梅雨が終わった関東はもわっとした蒸し暑さに苛まれている。この気候の変化を感じているのは、我々取材者だけでなく選手たちも同様だろう。
厳しい暑さの中で、本大会は中2日の連戦が続く。疲労の溜まりやすい状況を考えれば、スタメン11人を常に起用することは難しい。一人ひとりのコンディションを見ながら毎回メンバーを変えていくことになるのは容易に想像ができる。また、試合と試合の合間はコンディション調整に努める時間が長くなり、大会期間中に大きな変化をチームに促すこともできない。最初からチームの総合力が試される大会となるはずだ。
「初戦が大事」とはもはや常套句になっているが、今回も例に漏れず南アフリカ戦は重要な一戦になる。それは2017年12月に始動した森保一監督率いるU-24日本代表の歩みを見ても、なおさらそう思わざるを得ない。
例えば、2018年のトゥーロン国際大会や2020年のタイで開催されたAFCU-23選手権大会は、初戦で白星を得ることができず。決勝トーナメントに進出することができなかったどころか、タイでは一勝もあげることができないまま大会から姿を消すことになった。
一方で、2018年のAFCU-23選手権大会(中国)や第18回アジア競技大会、2019年のトゥーロン国際大会では、初戦をものにすることで勢いをつけ、グループリーグの突破を手繰り寄せている。
金メダルを目標に掲げる今、初戦にピークを持ってくる必要はないが、ここで敗れれば全ての準備が泡と消える可能性もある。だからこそ、まずは自分たちの全てを初戦に注ぎ、勝ち星をつかみ取りにいかなければならない。過去2度出場した五輪で初戦を引き分けで終えた主将の吉田麻也は、これまでの経験を若い選手たちに伝えている。
「ひとつやらなければいけないことは、コンディショニングをしっかりいい状態に持っていくこと。初戦はどんなに準備していても、やはりコンディションが悪かったら難しくなる。コンディショニングさえ整っていれば選手の実力もあると思うし、そこが一番のカギになると思います」
ケガで別メニュー調整が続いていた選手も本大会直前に練習に合流し、チームの準備は整った。いざ金メダルを獲得するための戦いへ。
東京五輪の幕が切って落とされる。