上写真=左から山本委員長、森保監督、宮本会長(写真◎5月のもの/Getty Images)
今まで通り日本サッカー発展のために(森保監督)
森保一監督の続投が決定した。世界的に見ても7カ月間という短期契約は異例だろう。会見に登壇した宮本会長はこの決断について、「ワールドカップが終わった今、われわれとして重要だと考えているのがアジアカップで優勝することです。世界を戦う前に、まずアジアで勝ち切る力を示していく必要がある。そしてアジアで結果を出せる監督は誰なんだという観点を重要視しました」と説明した。北中米W杯のアジア予選を最速で突破し、アジアトップレベルの力を示した森保監督に続投を依頼することになった。
とはいえ、アジアカップで勝つことは簡単ではない。森保監督も2019年のUAE大会は準優勝、2024年のカタール大会はベスト8という結果に終わっている。とりわけ中東で行われる大会で日本は苦しんできた。来年1月の開催地も、中東のサウジアラビアである。
そんな難しい大会に森保監督は三たび挑むことになった。しかも、大会の成績にかかわらず、退任が決まった状態で臨む。
「今まで通り、与えられた契約期間の中で、日本代表の勝利のため、日本のサッカーの発展につながると思って、自分がやるべきことに全力で尽くしたいと思っています。この契約期間の中で私自身、スタッフとともに選手とともに全力を尽くすことが、次への良きバトンタッチになるように、そしてしっかり結果を出して次につなげられるようにしたいと思います」
森保監督は変わらない姿勢でベストを尽くすと明言した。また、来年3月から指揮を執る大岩次期監督について、継承したいものを問われると「日本が世界で勝つために、世界一になるために、これまでやってきたことの成果と課題を(大岩)監督なりに抽出してもらい、未来への積み上げをしてもらえればと思っています。こうやって言うとぶつ切りのような話に聞こえるかもしれないですが、常にわれわれは夢フィールド(代表の練習施設)ではコーチングルームも隣にありますし、選手のやり取りという部分でも話をしています。これまでやってきたことについては、日本が勝つためにより選手たちが良い経験を積んで、より高いレベルでプレーできるようにということでコミュニケーションを取ってきました。ここからもそれは継続していきながらやりたいですし、監督が決まりましたので、より次に生きるようなコミュニケーションも取っていきたい」と考えを明かした。
会見の中で宮本会長が説明したところでは、そもそも今年3月時点で森保監督に一度、監督の契約は「W杯まで」と伝えていたという。しかしながら、西野朗・前日本代表監督や山本技術委員長と議論する中で、アジアカップで勝つことの重要性を再認識し、改めて森保監督に期間限定の続投オファーを出したとのこと。また、コーチングスタッフについては「現在、面談中」と山本委員長が状況を説明した一方、森保監督自身はこれまでの継続の中でアジアカップに臨む方向で考えていると話した。
アジアカップまで現体制を継続し、仮に優勝という結果が出たとしても、来年3月からは大岩体制に移行する。しかも、大岩監督はロス五輪を目指すチームとの兼任だ。宮本会長、山本技術委員長とも兼任のメリットや同一監督による育成年代から一貫した強化でチーム力を高めたスペインやアルゼンチンの例を挙げたが、ロス五輪の男子サッカーはアジアの出場枠が3.5枠からわずか2枠に減った。日韓W杯のときにU-20代表、シドニー五輪代表(本大会)と兼任したフィリップ・トルシエ監督も、東京五輪とカタールW杯の代表を兼任した森保監督も自国開催でいずれかの大会は予選が免除されていた。しかし今回はどちらの予選も戦わなければならない。しかも五輪に関してはこれまで以上に狭き門だ。
宮本会長は「今までよりも枠が少ないということはありますけども、(五輪の出場権を獲得できるように)サポートしていきたいですし、それがうまくいかなかったとしても信頼が変わらないように、サポートしていきたいと思っています」と話し、山本技術委員長は「我々もできることはすべてやっていきたい。ただ結果は大事だと思いますが、それだけではなく、プロセスをしっかり評価していきたい。その時点での成果と課題を総合的に評価していくつもり。日本サッカーの未来にとって何が最善かを見ていきたい」と結果ありきではないことを強調した。
次回のW杯までのサイクルを考えた場合、そして大岩監督体制がスタートすることが決まっている以上、森保監督が続投することで、今年9月の親善試合からアジアカップまで最大13試合が旧体制で『消化』するという見方もできる。そのことについて問われた森保監督は「今、やっていることが未来につながると考えてやってきましたし、その考え方を忘れなければ、自然と次につながると、私自身も納得して整理をつけてアジアカップまでということで引き受けさせてもらいました」と説明。また、JFAとしては今年9月、32年ぶりに自国で開催されるアジア大会(名古屋)も重要視しており、大岩監督率いるU-21代表で優勝を目標としているという。
「色々なケースを見てきた時に、長く(監督を)やることのメリットとデメリットの両方があると思っています。そういう意味で新しい空気というものもどこかのタイミングで入れなければいけない。そう考えて、大岩監督にお願いすることにしました。もちろん世界で勝つには我々の力をもっともっと上げていかなければいけないのは間違いない。そこに関して大岩監督とともにいい選手を育てていきたい」
宮本会長は大岩監督体制発足の理由をこのように説明した。異例の続投と来年3月の新体制の発足――。日本は極めて難しい選択をして、次のW杯に向けて歩き出すことになった。
