上写真=積極的な声出しで練習に活気をもたらしていた長友佑都(写真◎佐藤景)
相手が強ければ強いほど自分は生きる
「かなりサウジアラビアのサッカー熱、熱気が非常に高かったなっていうのは過去の大会からも、中東もいろいろ経験してますけど、特にサウジアラビアの熱気がすごかった印象が残ってますね」
2021年10月8日の前回対戦も、さらにさかのぼって2017年9月5日に戦った前々回の対戦も経験しているのはチームで長友ただ一人。誰よりもアウェーのサウジアラビア戦を知っていると言っていい。
いずれも先発で出場したが、結果は0−1で敗戦。冒頭の言葉は、長友の率直な感想だ。
「(前回は)本当に苦しかったなっていう印象ですね。相当に暑かったし、超満員になって、非常に熱気というか空気が薄い感じがして、ハーフタイムに帰ってくるともう、みんな苦しんでいたのは印象に残ってますね」
過酷な状況で迎えた後半、日本はミスから自滅し、試合を落とすことになった。そんな経験を踏まえて、今回はいかに戦うべきか。長友の思うところはこうだ。
「気候とか環境は動かせないから、あとはどういうメンタルの状況を自分でコントロールするか。しっかりコントロールしないと全て持っていかれるなと。実際、持っていかれて負けるべくして負けた試合だったと思う。このアウェー戦はそのメンタルコントロール、脳のコントロールっていうのはしっかりしなければいけない。強引かもしれないですけど、暑かったとしても暑いと思わないというか、そういう部分だったり、アウェーの熱気がすごい圧だなと思ったとしても、そう思わず全然余裕だって、それを上回っていく。弱い自分を超えていくような、そういうコントロールが必要」
幾多の修羅場をくぐりぬけた長友らしい言葉だ。
経験者らしさは、現地で初めてグランドを使って行った7日の練習でも見て取れた。ボール回しのメニューでは同じサイドバックで、今回が初招集となった関根大輝に積極に声をかけ盛り上げていた。長友の声出しをきっかけにチーム全体が熱を帯びていくのが伝わってくる。
「(サウジアラビアは)過去の大会も含めてボールを持てて、しかも個人の能力、身体能力がめちゃくちゃ高い。実際に苦労してるということと、(カタール)ワールドカップでも優勝国のアルゼンチンに勝った事実も含めて、本当に試合がどうなるかわからない。そのぐらいの手ごわさと強さを持っている」
そんな難敵を率いるのは、長友がインテルでプレーしている時代に監督を務めていたロベルト・マンチーニ。
「セリエAの対戦で出会うとか、チャンピオンズ・リーグで出会うとかっていうのはありそうなんですけど、アジアの最終予選で、しかもワールドカップをかけた戦いで、出会えるっていうのは、非常にうれしいし、楽しみ」
インテル時代はフィジカルを重視していた印象もあるというが、その後の指導キャリアの中で、長友のマンチーニに対する印象は変化していったという。
「イタリア代表(を率いていた時)は、結構うまい選手を使ったりもしていて、戦術も変わったりしていたんで、その辺は幅というか、相手に合わせたり、自分が今いる選手たちでどうこうチームを作るかっていうところが非常にうまい印象がある。イタリア人なんで、戦術的に何か相手がドキッとするようなことをしてきたり、対策をしてきたりするので。その辺はすごく奇妙だなっていうのは思います。あんなかっこいい顔してね。素晴らしい監督だなと思って、一緒に戦っていましたけど」
かつての恩師との再会はもちろんピッチの上で果たしたいところだろう。長友は9月シリーズの2試合ともにメンバー外だった。
「いつでも代表に貢献できるように準備してますし、プレッシャーがかかるほど相手が強ければ強いほど、自分は生きる、活躍できると自信を持っている」
初勝利という結果を手にするために必要なのは、メンタルコントロールと、長友が持つ豊富な経験かもしれない。