上写真=スタジアムで前日練習を行なった柴崎岳(写真◎JFA)
システム意識が強すぎると柔軟性がない
オマーン戦に臨む日本代表が、4-3-3で臨むのか、4-2-3-1で臨むのかは分からないが、オーストラリア戦、ベトナム戦と連勝を飾った『形』を継続するとすれば、4-3-3で臨むことになる。ただ、今回の試合は、同フォーメーションを機能させてきた左のインサイドハーフ、守田英正が出場停止。必然的に誰かがその役割を担わなければならない。
候補者の一人が、柴崎岳だ。ゴールへの意識と前線のサポートという両面から守田とは異なる特長を持つインサイドハーフになる。
「ポジションが前目ということもありますし、組み立ての意識より、フィニッシュのシーンでの自分の良さを出していけたらと思っています。シュートやラストパス、そのまた1つ前のパスだったり、どちらかというとゲームメーカーというよりは、フィニッシャー、ラストパスを供給する役割。そのシステムの中ではより意識してやっているところはあります」
森保一監督体制下のチームでは、ボランチとしてプレーする機会が多かったものの、柴崎が代表初ゴールを挙げたハビエル・アギーレ監督時代のベネズエラ戦では(2014年9月)、4-3-3の左インサイドハーフを務めていた(途中からは右)。メンバーが替われば、当然、戦い方も変わるものの、柴崎にとっては全く知らない『形』ではない。そもそも10月のオーストラリア戦でもベトナム戦でも終盤に出場し、インサイドハーフとしてプレーし、積極的にミドルシュートを放つなど、ゴールへの意識を示してみせた。
「システム上、(前線の中央では)大迫さんのキープ力に頼らざるを得ない状況はあるかなと思います。僕的にはより前に絡んでいくという役割というか、仕事も(したい)。もともと僕はそういう選手ですし、やりたいとは思っています。ワイドには裏に抜けられる選手が配置されていますし、大迫さんがある程度、低い位置にいたとしても、バランス的にはそこまで悪くはないと思う。配置はあるにせよ、選手距離感という意味では、そこにとらわれないことが大事。サポートの距離感はもうちょっと変化してもいいのかなと思います」
ここ2戦、日本の中盤はビルドアップとボール奪取に長所を持つ選手で構成されたが、安定したポゼッションを実現した一方で、センターフォワードに対するフォローがやや遅れるケースも見られた。得点が1点だけに終わった理由として多くの選手が挙げていたのが、距離感。攻撃の局面では選手間の距離を意識することが必要になる。ウイングが幅を取った際には当然ながらインサイドハーフによる前線のサポートは欠かせない。
試合の状況、相手の状況に応じて立ち位置を的確に取っていくことが重要だと柴崎は指摘する。「システム意識が強すぎると柔軟性がないし、要は自分たちがどういうポジショニングをその中で取っていくか。上回ってこその変化だと思うし、4ー3ー3でも4-2ー3ー1でも、誰が前に出て誰が下がるのか。誰が付いて誰がスペースを埋めるのか。試合の中で変化させていくことが大事だと思います。あいまいになってしまい、対応できなかったのは僕らの落ち度。そこは前回、オマーンと対戦したときの修正点で、対応しきれなかったところ。もうちょっと役割をはっきりさせて、あとは自分たちで、システムだけにとらわれないポジショニングを意識しないといけない」。システムありきではなく、そのシステムを踏まえた上でいかにプレーするか。柴崎は前回のオマーン戦の反省を踏まえて改善したいと言った。
また、その前回対戦では、オマーンにてサイドに追い込まれるようにプレッシャーをかけられて、日本の攻撃はたびたび滞ることになった。サイドチェンジは有効な攻め手の一つだが、密集を抜ける出口を閉ざされ、なかなか繰り出すことができなかった。「(サイドチェンジは)大事だと思います。前回のオマーン戦で起こった一つの事象としてはサイドチェンジがあまりにも少なかったなというところはあるとは思うので。攻め急ぎすぎている部分もありましたし、同サイドで攻撃が完結したりとかイージーなミスが起きてしまう部分もあった。そこはポイントの一つにはなるかなと思います」。柴崎自身もオマーン攻略の一つポイントになると話したが、一気に展開を変えるサイドチェンジは、柴崎の持ち味の一つでもある。
「上位との勝ち点差が縮まっていますし、ここでどういった結果を自分たちが持ち帰るかによって、1月、3月に、自分たちが迎える状況も変わってくる。本当に重要な試合。勝つだけです」
出番が来たら、ただひたすらに勝利のために力を注ぐ。一貫して変わらない姿勢と自身の持ち味を、柴崎はオマーン戦で示す。