なでしこジャパン(日本女子代表)は14日、FIFAランキングで日本の一つ上、9位のオーストラリアと国際親善試合を戦った。キャプテンの熊谷紗希は五輪本大会まで1週間のタイミングで実現した『テストマッチ』を終えて、守備面の収穫と自らの覚悟について語った。

上写真=守備面で手応えを得たという熊谷紗希(写真◎Getty Images)

ゼロで抑えたのは大きな自信

 大会1週間前に『格上』のチームと対戦できたのは、なでしこジャパンにとって有意義な体験になった。コロナ禍で、チームとして長らく実力国と対戦する機会がなかった。その意味で、オーストラリア戦は貴重な機会だったとキャプテンの熊谷は試合を振り返った。

「今までやってきた相手とはまた違って、球際での戦いだったり、少しでもボールを晒すと相手につつかれたり取られたりというところは前半多く見られた中で、そういう面では本当に今ここで体感できたことはすごく大きかったなと思います。あと全体としてはやっぱり裏のケア、そしてクロス対応というところでいいシミュレーションができたかなと。結果、ゼロで抑えられたことはすごく自信になったかなと思います」

 まずは収穫。鋭く縦を突く相手に、中盤の4人と最終ラインの4人の2ラインでタイトに対応。中をしっかり締めて、最後の場面でも集中し、破綻することはなかった。

「最終ラインの4枚と中盤4枚で声をかけながら、いい距離感で、時には本当にブロックを作り、前に前にいくのではなくて、あえて引くじゃないけど、構えて守備をすることも、事前キャンプで私たちもものにできたという自信があります。男子(チーム)相手に(試合を)やらせていただいたときに、そこでできたものもあったので、そういう意味では、今日も相手にやられなかったのは1つ大きな自信になったと思っています」

 前半は相手にペースを握られ、守備の時間が長くなった。それでも落ち着いて対応し、ゼロに抑えられたのは、準備してきたものがきっちり機能した証。キャプテンは手応えを感じていた。

 一方で、攻撃面では課題が見えた。相手を外し、ボールを前方へ運ぶことはできても崩しのアイディアを見せられなかったからだ。事前に相手の3バックを予想し、ビルドアップのやり方をイメージして試合に臨んではいた。「相手のウイングのサイドが誰に食いつくかによって、(自分たちの)サイドバックかサイドハーフがフリーになるということは、試合前から頭の中にはありました。結果的に、(岩渕)真奈のところでフリーを作れて前に進める時間もかなりあったと思います」。そこまでは良かったが、問題はそのあと。「ただ前半なんかは、その中でどうやってゴールに向かっていくか。もっともっとシュートシーンとか、ボックスの中でのチャンスを作るシーンは増やしていかなければいけない」。

 後半は相手のメンバー交代があり、日本が前に出られるようにもなったが、とくに前半、守備でソリッドなブロックを組み上げてボールを奪ったあとの振る舞いには改善の余地があった。前線との距離が遠く、ボールを送ってもカットされる場面がしばしば。さらに前線にボールが渡っても、単独突破しか手立てがない場面もあった。押し上げとサイドバックやボランチによるサポートが必要だろう。

 守備で得た手応えを、そして攻撃面で明らかになった課題をしっかり認識し、残りの時間でチームを本番仕様へと変えていくことになる。2011年に女子W杯で世界の頂点に立ってから10年。チームをけん引する立場になった熊谷は言った。

「10年前とは、年齢も含め、チーム内での立場だったり経験だったりはかなり違います。私自身、10年間いろいろなことを経験させていただいたので、世界と戦っている経験をチームに伝えたいというところもあるし、苦しいときに本当に自分の声だったりプレーだったりでチームを引っ張れるような、そんな存在にならなければいけないと思いますし、なるべきだと思う」

 大きなものを背負って臨む東京五輪まであと7日。頼れるキャプテンがなでしこジャパンのけん引車になる。


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