2週間前の9月27日、アウェーでのリーグ戦、J1第32節で1-5と大敗したばかりの川崎フロンターレを相手に、アルビレックス新潟はホームのデンカビッグスワンスタジアムで4-1と勝利。10月9日、JリーグYBCルヴァンカップ、プライムラウンドの準決勝初戦で先勝し、クラブにとって初のタイトルに前進した。

上写真=ファイナル進出へ、意欲を見せる新潟の小見洋太(写真◎J.LEAGUE)

2連勝してファイナルへ進むために

 チームもサポーターも一体となって歓喜に盛り上がるのは当然だ。しかし、32分に谷口海斗に代わって出場した新潟の小見洋太は、「自分の色を出し切れなかった。悔しさのほうが大きい1日になった」と、納得できない表情を浮かべた。「仕掛ける姿勢を、もっと出していくべきだった。まずはしっかり試合に入ろうと、どうしても『ボールを失わないように』という意識が強くなってしまい、結局、そのまま最後まで時間がたった感覚だった」。

 小見がピッチに入る直前の25分、小野裕二のクロスから谷口がボレーシュートを決め、新潟が先制する。2週間前の大敗だけではなく、リーグ戦で4連敗、合計15失点とチームはひどく調子を落としていただけに、ビッグスワンを満たす喜びも反動で大きいものがあった。

 ところが先制した余韻も冷めやらない中で、得点を決めた谷口が左太ももを押さえてピッチに座り込んでしまう。代わって小見が、左サイドハーフのポジションに入った。

 ボールを取られたくないあまりに、プレーが消極的になったわけではない。53分には右から小野が上げ、ファーに流れてきたクロスボールを押さえ、対峙した川崎Fの右サイドバック、ファンウェルメスケルケン際との間合いを冷静に計りながらためを作り、オーバーラップしてきた右サイドバックの橋本健人につなぐ。そこからショートパスを受けた星雄次が大きく流れを引き寄せる4点目を挙げた。

 8月の終わりに右太ももを傷め、およそ1カ月離脱していた小見は、3連敗で迎えたリーグ第33節・鹿島戦で先発。運動量を攻守に生かして良い流れをチームに引き込もうとしたが、不発に終わった。それを考えれば、守備のタスクを懸命にこなせた手応えは、自身のプレーを納得へと向かわせるきっかけにできるはずだ。

「1人で3枚見ないといけない局面もけっこうあった。優先順位を付けて、ゴールを守るところから逆算して中を割らせないことを意識しました。あとは周りから声で動かしてもらえるので。自分の判断でプレスに行こうとするところ、行けるなら行けるところの『自分発信』ではあるけれど、協力しながら守ることができました」

 10月13日、中3日で準決勝の第2戦を迎える。負傷交代した谷口のコンディションもあるが、次戦、先発の可能性もある。今回の対戦経験が、進化をうながしている。

「フロンターレの選手は、みんなボールの持ち方がうまく、何でもできる状態でプレーしている。限定しづらいし、普段なら寄せて体のどこかにボールを当てられる間合いでも、1人1人のプレーエリアが広いので、さらにもう一歩寄せないとボールを出されてしまう場面がいくつかありました。自分も参考にすべきところだし、すぐに次の対戦が来るので、しっかり修正したいです」

 相手は失うものは何もないというメンタルで勢いよく来るはず。受けないように、しっかり試合に入ることを意識する。2戦合計の結果ではなく、2連勝してファイナルに進むために、攻撃も守備もどんどん仕掛けていく。

取材・文◎大中祐二 


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