上写真=得意の形から長谷川の得点をアシストした旗手怜央(写真◎J.LEAGUE)
結果を残すことが大事
出場したのは62分から。与えられた時間はごくわずか。しかしその限られた時間の中で、旗手怜央は一つの結果を出した。清水エスパルスに1点差に詰め寄られた後、相手を突き放す長谷川竜也の得点をアシストした。
鋭い仕掛けでボックス右に進入すると、対応する相手DFより早く右足を振る。ボールは相手GKヴォルピを越え、ゴール左で待つ仲間のもとへ。パスを受けた長谷川は狙いを定めて頭を振るだけでよかった。
「一瞬の仕掛けは自分の持ち味。ペナルティーエリアでの仕掛けというのは、今後も自分自身がやっていかないといけないことだと思う。今日はそれがしっかり形となってできたので自信になりました。最初、ボールをもらった瞬間は(長谷川が)見えていたけど、抜いた後はあまり見えていなかった。でも(クロスを)上げる瞬間は竜也さんがフリーなのを確認していました」
守備者を外す鋭い仕掛け。抜き切った瞬間にクロスを上げる判断の確かさと技術力。そして瞬時に状況を把握する能力と冷静さ。プロとして初めて臨んだ公式戦で、自身の持ち味を示し、数字も残した。
だが、本人に満足感はない。まだ1アシスト。ポジションを確約されたわけでも、チームで居場所を確立したわけでもないと自覚する。
「まだまだです。この試合が終われば、すぐに次の試合に向けてスタメンもベンチも、試合に出るための競争が始まるので。今週またしっかり準備して、まず試合に出る権利を勝ち取ってから、次に結果を出すことを考えて、やっていきたいと思います」
清水戦は若手主体の攻撃陣で臨み、小林悠や家長昭博はベンチスタートだった。旗手がポジションを争うのは日本有数のタレントだ。コンスタントに出場機会を得るには、彼らを上回るものを見せていく必要がある。
「結果を残すことが大事だと思う。得点でもアシストでもなんでもいいから、今日も残したかった。その意味で得点ではなかったですけど、アシストできたのはよかった」
いま、本人がフォーカスするのは、フロンターレで出番を得て、結果を残すこと。そして勝利に貢献すること。そのために「自分のプレーをしっかり出すことが必要」だと話す。東京五輪は、あくまでその先にあるものであって、最優先で考えるものではない。
最後に一つ聞いた。川崎Fでポジションをつかむために何が重要と考えているのか、と。旗手は即答した。
「攻撃のクオリティー、すべてを上げること。そこをしっかりやらないと」
注目の大卒ルーキーは、地に足がついている。
取材◎佐藤 景