守護神・菅野孝憲はルヴァンカップ決勝をベンチで見つめることになった。ただ、その存在なくして北海道コンサドーレ札幌の決勝進出はあり得なかった。ファイナルに至るまでの全12試合に先発。経験に基づく冷静な判断と勝利への執念がチームにもたらしたものは大きい。かつて所属したクラブで2度のJ2降格やJ1昇格、J1優勝、そしてACLやクラブW杯で戦うなど、コンサドーレでも随一の経験を誇る菅野に、準優勝という今回の結果について聞いた。

上写真=チームメイトとともに準優勝の表彰を受ける菅野(写真◎J.LEAGUE)

■2019年10月26日 JリーグYBCルヴァンカップ決勝 @埼玉スタジアム2002
札幌 3-3(PK4-5) 川崎F
得点:(札)菅大輝、深井一希、福森晃斗 (川)阿部浩之、小林悠2

「ただ惜しかったね」で終わるのか?

 コンサドーレにとって初めてのルヴァンカップ決勝進出、そして壮絶な戦いを演じての準優勝という結果についてどう感じているのか。取材エリアに現れた菅野に話を聞いた。

「正直、僕は柏のときにも(天皇杯の)決勝で負けていますけど、負けたら何も残らない。じゃあ、去年の準優勝はどこかって言われても多くの人は分からないと思う。結果については、そう思います」

 口をついて出てきたのは、いくつもの修羅場を経験し、勝利の価値と敗北の意味を知る選手ならでは言葉だった。むろん、チームにポジティブな要素が全く残らないと言いたいわけではない。そのことを踏まえた上で、菅野はチームメイトたちを、ある面では刺激するかのように言葉を続けた。

「選手個人個人が、この結果をどう感じるかです。間違いなくチャンスはまた来ると思いますけど、それが来年なのか、再来年なのか、10年後なのか。今日戦った選手たちがこの結果を自覚することが重要だと思う。それができなければ、この結果だけで先につながるとは言えない。下から(=ピッチから)表彰されるチャンピオンチームを見るのはつらいもの。それを本気で悔しいと思うのか。ただ惜しかったね、で終わるのか」

 自身は歩んできたキャリアの中で悔しさを糧にして向上を期し、前に進んできた。そんな鍛錬があったからこそ、35歳になった今も、一線で戦い続けていられるのだろう。ルヴァンカップは決勝に至るまでの12試合すべてで先発し、フル出場。文字通り決勝進出の立役者と言っていい。

「危機感を持って一人でも多くの選手がこれから取り組んでほしいと思います。いま戦っているのは、あの浦和レッズだって残留争いするようなリーグ(J1)ですから。ちょっとした気のゆるみで、歯車が狂えば簡単に下に落ちてしまう。逆に言えば、こういう結果をちゃんととらえて歯車がかみ合えば、チームとしてさらに上に行くスピードを上げることができるし、選手自身もより良くなるスピードを上げることができる。サッカー選手でいられる時間は短いから、そのことにいかに気づくていくか。自分の立ち位置がいまどこにあるのか。それがチャンピオンになれるのかどうかに関わってくる。それは自分で気づかないといけないことだと思います」

 歴史に残る壮絶な決勝が終わった直後。当事者ありながらも、常に最後尾から、時には俯瞰してチームを見つめてきた守護神の視点は、仲間とクラブの未来、そして自身のこれからに向けられていた。

取材◎佐藤景 写真◎J.LEAGUE

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