上写真=終了間際に山根がドリブル開始。元ドリブラーの技術を見せた
写真◎福地和男

CBでもドリブルでゴール一直線

 湘南の曺貴裁監督がMVPとして挙げたのは、守備陣の4人だった。無失点勝利に大きく貢献した3バックの山根視来、坂圭祐、大野和成と、GKの秋元陽太。

 3バックはそろって上背がそれほどなく、CBとしては小柄な部類に入る。それでも、体格のハンディをはね返し、湘南の堅守を支えてきた。

 なかでも大卒3年目の山根は、桐蔭横浜大時代はドリブルが得意な攻撃的MFとして評価された一人で、CBとしての経験はまだ浅い。それでも、曺貴裁監督にコンバートされて、湘南でめきめきと成長。178センチのCBは、確かな手応えを得ている。

「普段の練習から死ぬ気でマークしている。どんな相手でもきっちり競れば、簡単には負けない」

 決勝でも防戦一方となった後半途中からは何度もクロスをはね返し、体を張ってシュートをブロック。「いつもよりも一歩早く足が出た」と満足そうな表情だった。

 守備から攻撃の素早い切り替えも光った。インターセプトしたボールをワンタッチで前線へ送るなど、カウンターの起点として機能。圧巻だったのは終了間際のプレーだ。味方が自陣でボールを奪うと、右サイドのオープンスペースへ駆け出してパスを受け、ぐんぐんとボールを運んだ。敵陣のボックス付近まで近づくと、ゴール方向へカットイン。シュートこそ打てなかったが、最後は体勢を崩しながらも味方にパスをつなげ、しっかりと時間を稼いだ。

「あの時間帯はシャドーもワイドも疲れていたので、スタミナの残っている後ろ(3バック)の僕らがチームを助けないといけない」(山根)

 いまとなってはすっかりCBが板に付いているものの、ボールを持つと、かつてドリブラーとして名を馳せた攻撃的MFの血が騒ぐのだろう。

「あの場面、できれば、シュートまで持ち込んで、点を取りたかった」とにんまり笑った。

 型破りなCBは、常識にとらわれない湘南のイメージにぴったり。近い将来、山根が自陣でボールを奪取し、キレのあるドリブルでそのまま独走ゴールを決める日が来ても、驚くことはない。

取材◎杉園昌之 写真◎福地和男、近藤俊哉


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