RB大宮アルディージャは25日、ホーム、NACK5スタジアム大宮で北海道コンサドーレ札幌を1−0で下し、今季7勝目を挙げた。藤井一志が決めた決勝ゴールの起点になったのは、今季加入の新戦力で10番を背負う豊川雄太だった。

上写真=途中出場して勝利に貢献した豊川雄太(写真◎J.LEAGUE)

初の途中出場でも大きな仕事

 62分、豊川雄太はカプリーニに代わってピッチに入ると大きな仕事をやってのけた。GK笠原昴史からの長いボールをセンターサークル内で収めた杉本健勇を素早くフォロー。落としのパスを受け取ると、一気にドリブルで持ち上がった。

 そしてボックス手前で対峙する相手左サイドバックの高嶺朋樹と駆け引きし、並走する藤井一志へタイミングよく展開。右クロスをお膳立てした。

 このクロスは一度相手にクリアされたが、すぐさま左から下口稚葉がクロスを上げ、最後は藤井がボレー。大宮が決勝点を挙げた。

「どっちに転んでもおかしくないような展開でしたし、僕が(ピッチに)入る前はちょっと相手ペースだったので、流れを変えようと思っていました。久しぶりに途中からでしたけど、良い感じで入ることができました」

 ここまでは10試合すべてで、先発出場。今季初めて途中からの出場となったが、豊川はビルドアップに積極的に関わり、ゴールにも絡むという、自身に求められる役割を見事に果たしてみせた。

「今年トライしている部分で、起点になりながらゴール前に入っていくというところを出せた。今までは最終ラインと駆け引きしてゴールを狙うプレーをしてきましたけど、それも持ちつつ、起点にもなっていくことにトライしています。相手の形もありますけど、最後に自分のところにパスが返ってきたりすると面白いですし、そうなると攻撃の幅も増えると思っています」

 ビルドアップに加わって攻撃の起点になりつつ、ゴールを狙うこともできれば、これまで以上にチームに貢献することができる。だから豊川は、新しい自分を求めている。

「今はそこに面白さを見いだしているというか。コーチと色んな映像を見ながら取り組んでいます。まだまだうまくいかないこともありますけど、今までになかった楽しさを感じています」

 完成形にはまだまだ遠いものの、理想像ははっきり描けている。参考となる存在として、豊川は1人の選手の名を挙げた。

「グリーズマンのプレーとかよく見ますけど、年齢を重ねてプレースタイルを変えている。献身性を持ちつつ、起点になってゴール前に入っていけるようなプレーを見て学んでいます。2017年とか18年ぐらいの頃は、裏取りの選手という印象でしたが、起点になりながら最終的にゴール前に入っていくし、守備でもすごい」

 今年34歳になったアトレティコ(スペイン)所属の元フランス代表。かつてはウインガーとして名を馳せたが、セカンドストライカーや攻撃的MFの役割を担うようになってからは、多彩な得点パターンとともに守備面の貢献でも知られる。

「きょうのプレーはそれこそグリーズマンのようだったのでは?」と尋ねると、今年9月に31歳になる豊川は首を横に振った。

「今日も(ゴールの)チャンスがありましたけど、今シーズンはチャンスがありながら結構外している。もうそろそろ得点を量産しないと。もちろん得点ばかりに意識がいってしまうと、ゴール前で構えてしまって今までの自分になってしまうので、今日のように攻撃の起点になりながら、ゴール前に入っていくプレーを繰り返しトライしていきたい。ボールに触る回数を増やしながらやっていけたらと思います。まだまだです」

 グリーズマンが評価されるのは、チームを勝たせる、そんな存在であるからだ。2018年のワールドカップでは4ゴールを記録し、アシストでもフランス代表の優勝に貢献したが、2022年のW杯ではチーム事情から中盤でプレーし、ビルドアップに積極的に関わったうえでチャンスメークしつつ(3アシスト)、守備にも奔走。その万能性で大きな役割を果たした。

「周りを生かして自分も生かされるように。もっともっと幅を広げたいですね」

 その志と意欲はこの日、均衡を破るゴールを生み、勝利を呼び込んだ。「でも、もっとできると思います」と豊川。

 大宮の10番の進化はきっと、J1昇格を目指すチームの進化にもつながっていく。

取材・文◎佐藤景


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