「自分ではあまりわからないんです」
――続く18節の水戸戦(◯3-0)のゴールは、相手の横パスを自陣で狙ってカットして、そのままドリブルで独走して決めました。ドリブルしながら後ろを振り返っていましたよね。
三戸 後ろから回ってくる選手がいるかもなと思ったし、相手が後ろから来ているかな、時間をかけ過ぎたらどうしよう、と考えてちらっと見て、誰もいなかったので自分のタイミングで持っていけた感じですね。
――後ろを振り返ったことが、一種のフェイントになったかもしれませんね。
三戸 その狙いもありました。でも、後ろを向いている瞬間に取られないかと心配もありましたけど。
――右寄りのコースを取って持ち運び、シュートはニアに決めています。その直前には同じようなところからファーを狙って打って残念ながら入りませんでしたが、そのことが、結果的に「見せ球」のようになりました。
三戸 最初のシュートは練習して自信があったんですけど外れてしまって、でも次も、谷口(海斗)選手が左にいたのでこぼれ球に詰めてもらえると思ってファーに打とうとしていました。ただ、相手選手の足が見えて、ファーだったらその足に当たるかなと思ってニアに打ったんです。
――そこまで冷静に見えていたわけですね。きれいに右を突くシュートでしたが、三戸選手のシュートは膝下の振りが速く、コンパクトに振ってもパンチ力のあるボールが飛んでいきます。
三戸 それはよく言われますね。でも、自分ではあまりわからないんです。打ったらそうなるというか、自分のシュートはこういうものだと思っているので。だから、それが武器になるとは感じていなくて、普通のシュートだと思っています。
――それは意外です。ナチュラルにあのシュートが打てるとは。そのゴールのあとには、試合を決める本間至恩選手のチーム3点目をアシストしています。またもペナルティーエリア左に潜り込んで、本間選手とワンツーを決めてお膳立てしました。
三戸 至恩選手がドリブルで中に入ってくるのは見ていて分かることですし、あそこに入って至恩選手が右足で巻くシュートを普段から練習しているのを見ていたので、打ちやすいところにボールを置こうかなと。そうしたら決めてくれました。
――本間選手は左から持ち運んで縦への突破も、中へのカットインもどちらも鋭いですが、あのシーンではどちらを予測していたんですか。
三戸 あの瞬間は中に来るかなと思ったんです。直感、じゃないですけど。
――でも、それが的中したわけですね。2人のコンビネーションの良さが見て取れるシーンでした。そんな素晴らしい5月を経て、6月にはU-21日本代表の一員としてU-23アジアカップに出場、3位となりました。
三戸 国際大会を経験して、新潟を引っ張っていかなければいけない、やってやる、という気持ちはすごくありますね。代表に選ばれて自信もつきましたし、自分がこのチームを引っ張っていきたいと強く思っているところです。
――そのアジアカップの期間には、「#三戸ちゃん」がツイッターのトレンドにも上がりましたね。すごい人気です。
三戸 ほとんどがアルビレックスのファン・サポーターの皆さんの反応だと思うので、本当にありがたいです。たくさん応援してくれるなと改めて思ったし、うれしかったです。
――J2リーグは折り返し地点を過ぎ、このインタビューの時点では2位。昇格レースはさらに激しいものになっていきます。そんなファン・サポーターとともに、最後に喜びを分かち合いたいですね。
三戸 J1昇格に向けて一戦一戦、戦っていくだけです。去年は後半戦に失速したので、その反省を生かしながらチームのみんなで頑張っていきたいと思います。個人的には今季は得点とアシストで合わせて10を目標にしていて、それがかなうようにしていきたいですね。あと5点は最低ラインなので(第23節時点で3得点2アシスト)、そこを目指していきます。
取材・構成◎平澤大輔
Profile◎みと・しゅんすけ/2002年9月28日生まれ、山口県出身。JFAアカデミー福島のU-15、U-18でプレーして、2019年にはU-17日本代表の一員としてU-17ワールドカップに出場した。20年9月に特別指定選手としてアルビレックス新潟でプレー(試合出場はなし)、21年にプロ契約し、25試合2得点。今季は、田中達也コーチが昨年までつけていた背番号14を受け継ぎ、松橋力蔵監督の指揮の下、主力の一人として主に右サイドハーフでプレーして、得意のドリブルとパンチ力のあるシュートでサポーターを喜ばせている。第23節時点で15試合3得点。6月にはU-21日本代表としてU-23アジアカップでもプレーした。164cm、60kg。