上写真=吉田陣平がプロデビュー。落ち着き払ったプレーで2点のビハインドを追いかけた(写真◎J.LEAGUE)
■2022年5月15日 J1リーグ第16節(Gスタ/6,287人)
町田 2-1 新潟
得点者:(町)山口一真、鄭大世
(新)鈴木孝司
「良さをしっかり出してくれた」と松橋監督も評価
その瞬間は、81分にやってきた。J2第16節のFC町田ゼルビア戦で、星雄次に代わって吉田陣平がピッチに入った。ポンポンと鼓舞するように手をたたきながら、跳ねるように駆けてボランチのボジションについた。1分後に千葉和彦がまず安心させるようにと気遣うかのように優しく預けたボールを止めて、ファーストタッチ。
「緊張よりも楽しみという感情のほうが大きかったですね。実際に緊張はなかったですし」
プレーにも言葉にも堂々としたところがある。
「監督からは、守備は気にしないでいいから、攻撃で違いを見せるようにと言われました。0-2で負けていたし、自分のできることは流れを変えることでした」
町田は2点のリードを守ろうとしっかりとブロックを組んできている状況。前線からのプレッシャーがそれほどないことを利用して、高宇洋の右隣でどんどん顔を出して相手の2トップの背中で受けてさばき、を繰り返した。
89分には左の堀米悠斗から受けて反時計回りにターン、右外へ振ると見せかけておいて、DFと駆け引きしていた鈴木孝司の裏抜けを見逃さずに縦にミドルパスを送り込んだ。90+2分にも右からの藤原奏哉の横パスを中央で受けて相手をかわし、再び鈴木へループ気味のパスを狙った。さっそく披露した、2つの「違い」。
「いま練習の終わりに田中達也コーチと毎日パス練習をしていて、そういう状況でのパスもやっていました。だから、イメージはあったのですが、もうちょっと孝司さんと合えば得点になっていたと思うので、詰めていきたい」
佐賀東高校から今季加入したルーキー。ここまで3カ月のプロのトレーニングで得た感覚を、さっそく本番のピッチで表現できた。
「でも、アシストや得点でチームを救えるプレーをしたかったけれど、残念ながらできなかったのが悔しい部分です」
対する町田には同じ高卒ルーキーのボランチ、宇野禅斗がいて、こちらも途中から出場して対峙した。ただ、宇野はすでに6試合目。青森山田高校で日本一になっている相手に、プロでは負けていられない。90+6分には自陣で奪ったボールを持ち運び、止めに来た宇野を右にかわして攻撃につなげている。
90+7分には2度続けて獲得した右CKでキッカーも任された。2度目のキックのこぼれ球から再び蹴ったクロスが相手にブロックされたところで、試合終了のホイッスル。
「やっと自分のプロの一歩、Jリーグデビューができたので、これからスタメンを取れるように頑張っていきたい」
手応えは、あった。松橋力蔵監督も「非常にいいプレーをしてくれたと思います。彼の良さをしっかり出してくれたし、あとはパスを通せるか通せないかのところはこれからですが、今日は期待しているプレーをしてくれたと思います」と目を細めた。
敗れたものの、サポーターからも大きな拍手が贈られた。
「チームとしては、次に向けてがんばれと、自分に対しては試合に出続けられるようにがんばれよというように聞こえました」
高、島田譲、秋山裕紀、星とレベルの高いポジション争いに、恐れずに向かっていく。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE