上写真=鈴木孝司が復帰ゲームで感激の決勝ゴール!(写真◎J.LEAGUE)
■2022年4月3日 J2リーグ第8節(えがおS/2,885人)
熊本 1-2 新潟
得点者:(熊)坂本亘基
(新)谷口海斗、鈴木孝司
「相手とボールと逆の動きをすれば」
感極まって、声が出なかった。ロアッソ熊本を最後の最後で倒したアルビレックス新潟の逆転ゴール。ヘッドで押し込んだ鈴木孝司は、さまざまな思いで声をつまらせ、深く息を吐いてから、ようやく言葉を絞り出した。
「ケガでチームに…(フウ)…(フウ)…貢献できなかったので、とりあえず決めて勝つことができてすごいよかったです」
苦しかった。2月の開幕戦ベガルタ仙台戦で負傷して55分でピッチを去ってから、ずっとリハビリに向き合う日々。気がつけば1カ月以上が経過していた。この試合がそれ以来のベンチ入り。
4日前の前節ジェフユナイテッド千葉戦では、アディショナルタイムに失点して敗戦。その重い空気を変えたい試合だったが、いきなり4分に先制を許した。21分に谷口海斗が超ロングシュートで決めて同点に追いつくと、ようやく新潟の時間が増えた。後半はほとんど攻め続けた。だが、ゴールだけが遠い。スコアが1-1から動かない。鈴木がピッチに送り込まれたのは84分だった。
「アップしているときにもチャンスが多かったですし、オープンな展開だったのでチャンスは来ると思っていました。残り10分もないぐらいで入って、自分がゴールしてチームを勝たせることだけを考えて試合に出て、味方のいいパスもあって点を決められてよかったです」
90+2分、CKのこぼれ球を高木善朗が拾って、一度GK小島亨介まで戻した。そこから一気に前線へ。右前の裏のスペースに斜めに抜け出した田上大地がボールを手懐けて顔を上げると、鈴木は左に走っていた。
「キーパーが持ったときに、大地が裏を狙うのをわかっていました。僕はオフサイドポジションだったのでボールに関与できなかったけれど、大地はセンターバックながら攻撃的な選手なので、あそこでああいう運動量を出してくれてすごく助かります。それが見えて、僕も相手とボールと逆の動きをすれば、キーパーとディフェンスは僕のことを見づらく捕まえづらいと思いました」
そこに、浮き玉のパスが来る。
「最後は決めるだけでしたけど、ていねいに吹かさないように決めました」
ヘッドでしっかりとゴールに送り届けると、そのままの勢いでゴール裏に陣取る新潟サポーターの元へ走って、雄叫び。
開幕から3連続引き分けのあと、2勝2敗で五分の星で進んできた。少しでも勝ち点を増やすために、この試合に勝って白星優先の分岐点にするつもりだった。そこでもぎ取ったドラマティックな勝利。ケガで苦しんだエースが復帰ゲームで決めたという物語性も、勢いをつけるには大きな意味を持つ。松橋力蔵監督もエースの最高の復帰劇を喜んだ。
「開幕戦こそ試合に出場しましたが、そこで受けた負傷で彼も長い期間、苦しみながら、でもあきらめることなく、日々努力を重ねた結果が今日のような日につながったと思います」
そんな鈴木は、新潟の快進撃をここから始めるために、改めて一丸を誓う。
「成績のことで去年と比べられてしまいますが、まだまだ先は長いので、選手は誰一人あきらめていません。一戦一戦勝って積み重ねられるように、これからもまたチーム全員でサポーターも含めて戦っていきたい」