上写真=鈴木孝司はホームでは3月以来のゴール。サポーターとともに喜んだ(写真◎J.LEAGUE)
■2021年10月9日 明治安田生命J2リーグ第33節(@デンカS/観衆9,258人)
新潟 1-0 山口
得点者:(新)鈴木孝司
「歓声や熱量で僕も興奮しました」
「ホームで……いや、というよりも、得点がなかなか取れない時期が続いて」
そうやって言い直したところが、この人の真っ直ぐさを示しているのではないか。J1第33節でレノファ山口FCを迎えたアルビレックス新潟に1-0の勝利をもたらしたのは、鈴木孝司だ。
確かにホームでの得点は3月27日の第5節東京ヴェルディ戦以来、半年以上もごぶさたで、得点も今季6つ目、3試合ぶりのゴールだった。62分、中盤で自らハイボールに競り合ってボールを高木善朗に預け、ワンタッチで右に展開していくのを見てゴール前に並走して、飛び出してきたGK関憲太郎をかわした三戸舜介からの折り返しをもらって無人のゴールにプッシュした。
「ヘディングで競る前にヨシ(高木)のポジションも見えていました」と、きっかけのハイジャンプで冷静につないだ。「ヨシがいいタイミングでワンタッチで三戸に出したときに、キーパーとの距離を見てかわせると思いました」と三戸が抜け出すことを予感してゴール前に進入していく。そこでスピードをコントロール。「早く入りすぎると角度がなくなってしまうので、うまくスピードを調整しながら入ってフリーになれました」と最高のタイミングを自ら導き出した。そして、フィニッシュ。
パスが出てくることを信じて走った結果のゴールだが、実は最後の瞬間に「ちょっと緊張した」という。それでもしっかり決めきって、「自分のゴールもそうですけど、全員で戦って勝ち点3が取れてうれしかった」とニコニコだった。前節はツエーゲン金沢に0-1で敗れて、昇格圏内の2位まで10ポイント差となる4位後退。それだけに、この試合に負けるわけにはいかなかったのだ。
「決めるだけ、というボールでしたけど、チーム全体で取ったゴールだったのでうれしかったです」
みんなで決めたゴール、ということが重要だろう。キックオフからずっと山口のハイプレスに悩まされてなかなかリズムを作れなかった。アルベルト監督は前節の敗戦によるメンタル面でのショックの影響も指摘したが、そこから押し戻したのは、飲水タイムを利用したポジションの微調整だった。
スタート時には谷口海斗が最前線に立ち、鈴木は1.5列目のイメージ。アルベルト監督は「鈴木をセカンドフォワードのようにして、背後の飛び出しだけでなく中盤に降りてくるプレーにも期待しました。2人を配置することで得点力を上げたいと期待しました」と狙いを明かしたが、山口の勢いをそぐためにも鈴木をトップに、谷口を左サイドハーフに移してからテンポが生まれ始めた。
こうして、相手の迫力を少しずつそいでいってから生まれた貴重なゴール。すぐさまゴール裏のサポーターのもとに駆け寄った。
「僕が出ているのを疑問に思う人もいたと思うし、そこで自分の力を示せたというか、ゴールできてお待たせ、というところを含めて、一緒に喜びたかったんです。今回は自然とベンチよりサポーターのところに行きました」
まったく、サポーター泣かせだ。
「喜んでもらえている歓声や熱量で僕も興奮しましたし、よりもっとやらなきゃと思いました」
残りは9試合。その熱を、さらに熱くする。
写真◎J.LEAGUE