明治安田生命J2リーグ第19節で6月21日に唯一行われたのが、ブラウブリッツ秋田対アルビレックス新潟の一戦。異なる哲学を持つ両チームが、90分間、自分たちのスタイルを貫き通す白熱の展開になった。アウェーの新潟が首尾よく2点を奪って3試合ぶりに勝ち点3をもぎ取ったが、秋田のゴールへの迫力も見ものだった。

上写真=本間至恩はアクシデントによる途中出場ながら、1得点1アシストと気を吐いた(写真◎J.LEAGUE)

■2021年6月21日 明治安田生命J2リーグ第19節(@ソユスタ/観衆3,013人)
秋田 0-2 新潟
得点:(新)本間至恩、矢村健

画像: ■2021年6月21日 明治安田生命J2リーグ第19節(@ソユスタ/観衆3,013人) 秋田 0-2 新潟 得点:(新)本間至恩、矢村健

「敗戦の中にも宝はあります」と秋田の吉田監督

 アウェーのアルビレックス新潟にとっては、長い長い後半だっただろう。1-0でリードしながら、ブラブリッツ秋田の圧力になかなかチャンスを作れないでいた。

 ホームの秋田は後半から入ったFW吉田伊吹のキープ力に象徴されるように、素早いロングパスを収めてからゴールに迫っていくスタイルで新潟を押し込んでいく。跳ね返されても回収し、連続して前へ前へとボールを運ぶ。だが、フィニッシュにいけそうでいけないもどかしさも残すことになった。

 試合を決定づけたのは、交代選手だった。89分、新潟は堀米悠斗が中央に送ると、75分に送り込まれた谷口海斗がターンして、43分からプレーしていた本間至恩へ、突破からシュートと思わせて、優しく裏へパス、斜めに走り込んでいたのは、62分に登場していた矢村健。右足でしっかりとボールをたたいてゴール左に送り込んだ。残り時間がほとんどない中での追加点は大きかった。

 このように、異なる哲学のせめぎ合いは、常に興味深い。

 厳しく守って前線に遠慮なくボールを送り込むのが、ホームの秋田の戦い方。相手のプレスをかいくぐりながら、テンポよくボールを動かしてすき間を見つけて攻めていくのが新潟のフットボール。いわば水と油のようなまったく違うスタイルのぶつかり合いとなった試合は、どちらも自分たちを曲げることなく90分を貫き通した。

 前半に上回ったのはやはり、3位につける新潟だった。秋田のプレスにはまることなくボールを動かし続けて、右サイドを中心に何度もチャンスメーク。前半アディショナルタイムとなった45+3分に、まさに真骨頂と言えるような崩しから先制する。

 右でプレスをかいくぐり、高木善朗が左サイドの堀米悠斗へ大きく展開したところがスタート。島田譲とパスを交換しながら持ち運び、再び堀米が島田へ縦パス、その間に左から中に入ってきた星雄次にワンタッチで預けると、その星もワンタッチで中へ、高木が反時計回りにターンして右足で鋭いシュートを放った。これをゴール前に潜り込んできた本間が右足で触ってコースを変えて、ゴールに流し込んだ。新潟にとっては実に7試合ぶりの先制点だった。

 後半はがらりと様相が変わり、ホームの秋田の時間が続く。最終ラインでボールを回す新潟を深い位置まで追い立てて、逆にロングキックを誘発しては回収する作業を徹底。秋田らしさを存分に披露して、同点の可能性を大いに高めた。

 それは、吉田謙監督の言葉にも表れた。

「敗戦の中にも宝はあります。チーム一体でゴールを目指す姿は光を放っていたと思います」

 ひたむきにボールを奪ってゴールに迫る秋田らしい哲学を、特に後半はのびのびと表現していた。

 しかし、だからこそ、一瞬のスキを突いて奪った新潟の追加点の意味は大きい。なかなかボールを動かせなかった後半のうっぷんを晴らすようによどみなくつなぎ、自分たちのスタイルをゴールで堂々と示してみせた。

 新潟のアルベルト監督は落ち着き払った満足の表情で振り返った。

「ここ数試合はチャンスを作りながら得点できませんでした。無失点で終えるのは重要ですし同時にとても難しいことです。ただ、私たちは失点しても勝利を目指すチームです。毎試合、可能であれば2点、3点を決めることを目指してプレーしています。最も大きな武器は守備ではなくて攻撃力です」

 押し込まれながらもゴールを狙いにいって、しっかりと実行した哲学に胸を張った。

写真◎J.LEAGUE


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