上写真=矢野貴章のパワフルさは相変わらず。絶好機を外したことを悔やんだ(写真◎J.LEAGUE)
■2021年4月21日 明治安田生命J2リーグ第9節(@カンセキ/観衆2,951人)
栃木 2-2 新潟
得点:(栃)森俊貴、面矢行斗
(新)矢村健、千葉和彦
「狙っていたサッカーができた」
かつてのアルビレックス新潟のストライカーが、古巣に牙をむいた。栃木SCのFW矢野貴章は、猛然と襲いかかるプレスと抜け目ないポジショニングからのフィニッシュで、相手にとって脅威であり続けた。
「最後の最後まで相手を苦しめることができました。狙っていたサッカーができたと思います」
8分に矢村健にスーパーゴールを許して先制されるが、24分に森俊貴のゴールで追いつくと、56分には面矢行斗がたたき込んで見事に逆転に成功した。
この2点目では、矢野らしさが生きた。右からの森の折り返しに対して中央で待ち構えると、相手に引っ張られるように倒された。これで混戦が生まれ、相手GK阿部航斗がはじいたこぼれ球をジュニーニョが狙い、さらにこぼれたところを面矢が決めた。鮮やかな崩しと豪快なフィニッシュの流れの中で、嫌なポジションに入って相手の気を引き、献身的に泥臭く仲間のためにつぶれるあたりは、まさに「矢野ワールド全開」といったところだろう。
「新潟はつなぎはうまかったと思うけど、うちもすごく連動した守備だったり動きの中で奪うことができたと思うし、チャンスも数多くできました。この連戦でもほとんど90分間できたことは、非常に良かったと思います」
「個人というよりは全体のこと」
しかし、大きな後悔が二つ。一つはビッグチャンスを取り逃したことだ。
「前半も後半も決められるチャンスがあったので、シュートが枠に行かなかったことを考えると、得点を取れなかったのは残念です」
27分にかつてともに戦った千葉和彦から強奪してそのままゴールに突き進み、GKと1対1のチャンスを迎えるが、シュートは上へ。53分には左からの面矢のセンタリングをヘッド、相手に当たって目の前にこぼれ、あとは押し込むだけだったが、右足アウトに当てたボールはまたもバーの上へ。
そしてもう一つが、勝ちきれなかったことだ。しかも、左CKから千葉に同点ゴールを許してしまったのは90+2分と、試合終了間際だった。
「やっぱり僕たちが勝っている状態では相手は点を取りに来るので、押し込まれる時間帯は絶対に来ると思っていました。そこで最後の最後まで耐えていたけれど、やっぱり最後のセットプレーは非常にもったいなかったです」
「最後にセットプレーで入れられたのは、いまの新潟の強さです。ああいうところで決められるのがうちの弱さです」
田坂和昭監督は最後は個人の問題としながらも、ゾーンディフェンスの穴を突かれた格好だ。矢野は「個人というよりは全体のことだと思います。誰がということではなく、チームとして新潟のあそこのところは警戒はしていたんですけど、やられてしまったのはもったいない」と悔やむしかなかった。
だが、その全身からみなぎるパワーはまったく衰えていないし、むしろ新潟時代よりも鋭さを増している感さえある。かつての仲間に、ファン・サポーターに改めて「貴章健在」を堂々と示したのだった。