上写真=同点弾で大喜びのサポーターの声を聞きながら、高宇洋の喜びは控えめ。勝ちきれなかったことを悔やんだ(写真◎J.LEAGUE)
■2021年4月4日 明治安田生命J2リーグ第6節(@ギオンス/観衆3,420人)
相模原 2-2 新潟
得点:(相)ユーリ、平松宗
(新)ロメロ・フランク、高宇洋
「でもそれは、言い訳にしかならない」
ヘッド一発で救ったのは、いぶし銀のボランチだった。
開幕5連勝で突き進むアルビレックス新潟は、SC相模原とのアウェーゲームで難しい戦いを強いられていた。12分にロメロ・フランクが先制しながら23分に追いつかれ、後半開始早々の48分には1-2と逆転された。今季初めて、先行される展開だ。風に悩まされ、乾いた芝にボールが走らず、相模原のハードタックルに苦しんだ。
61分の右CK。左利きの島田譲がインスイングで蹴ってくる。追い風が強いから曲がり幅も大きくなる。島田はファーに送り込んだ。
「普段の練習では自分が他の選手をブロックしてフリーにさせる役割でした。前半から2、3本あった中で自分がブロックしていることを分かって相手が声掛けしていたので、あのシーンではみんながニアに動いてなんとなく逆のファーに動きました。ユズくん(島田)からいいボールが来て、角度はなかったけどいいコースにいってよかったです」
高宇洋は一人、逆の動きをしたことでマークがはがれた。ファーポストのさらに奥に落ちてきたボールに正対し、スタンディングヘッドでポストと相手の間にしっかりとボールを送り込んだ。同点ゴールだ。
今季加入したボランチにとっては、新潟初ゴール。だが、その喜びも大きくはない。鋭いボール奪取とテンポの良いパスの中継役として新潟の鮮やかな攻守を下支えする存在としては、嫌な流れを自分たちの方に引っ張りきれなかった後悔が先に立つ。
「失点シーンのところがミスで軽い部分がありました。防げた部分も大きかったので、そこはしっかり修正したいと思います。攻撃のところでももっと相手を揺さぶって主導権を握って動かして、その中で相手ゴールに迫る回数、バランス、質をもっともっと上げていければ」
最初の失点はクリアにもたついたところで島田が与えたPK、2点目は千葉和彦の縦パスがずれてつぶされて縦パス一本でひっくり返されたカウンターから。
「風がありましたし、相手もおそらくわざとグラウンドの水をまかなかったので、いつものようなスムーズな感じではできませんでした。でもそれは、言い訳にしかならない。その中でもしっかり自信を持ってボールを動かしたり点を取るために、いいバランスで、いい距離感でできることがあったはずです」
相模原は5-3-1の並びで堅陣を築き、それを新潟の流れるような攻撃がどう崩すかがポイントだった。しかし、ミスとピッチコンディションの違いに戸惑いがあった。
「こういうゲームとか、ピッチコンディション、試合状況はこれからあると思います。アウェーで勝ち点1を取れたのは大きいけれど、こういうゲームでも勝ち点3を取っていければ本当に強いチーム、昇格できるチームになっていくと思います」
いわば、新潟が本当に強くなるためのレッスン。この試合を見て重心を低くしてブロックを敷いてくる対戦相手は、今後増えるかもしれない。しかし、それを破ってこそ本物。高宇洋と仲間たちが目指すのは、そこだ。
取材◎平澤大輔 写真◎J.LEAGUE