2月28日、明治安田生命J2リーグは開幕戦(第1節)が開催され、大宮アルディージャは水戸ホーリーホックとケーズデンキスタジアム水戸で対戦。前半に先制される苦しい展開を強いられたが、後半から出場した柴山昌也が流れを変え、2-1で逆転勝利を収めた。

上写真=後半に同点ゴールを挙げたルーキーの柴山昌也(写真◎J.LEAGUE)

■2021年2月28日 J2リーグ第1節(@Ksスタ/観衆3,312人)
水戸 1-2 大宮
得点:(水)深堀隼平
   (大)柴山昌也、奥抜侃志

「点を決めるために準備していた」

 今季、大宮のアカデミーからトップ昇格を果たしたレフティーが、開幕戦で輝きを放った。

 背番号「48」がピッチに姿を現したのは0-1で迎えたハーフタイム。MF佐相壱明に代わって「4-4-2」システムの左サイドハーフに入った。すると、すぐさま柴山昌也にチャンスが訪れる。後半開始から53秒、相手のクリアボールがペナルティーエリア内の柴山の前に転がり、右足を強振。シュートは枠を外れ、頭を抱えたが、この場面は“柴山劇場”の序章に過ぎなかった。

「昨シーズンに試合に出た経験がすごく大きい」と柴山が話すように、2種登録された高校3年時の昨季、第38節愛媛戦で88分に途中出場し、すでにJリーグデビュー済み。そのため、「今回は緊張せずに、しっかり(試合に)入れました」と、リーグ戦2試合目となる今節ではプロの舞台でも臆することなく、その才能の片りんを見せていった。ダブルタッチもまじえた小刻みなボールタッチで相手選手の間をスルスルとドリブルし、タイミングをはかって鋭いスルーパスを繰り出す。左サイドを基点に縦へ、中央へと縦横無尽に動き回り、その左足を駆使して勝利への道筋を探った。

 そして、柴山がこの日一番の光を放ったのは70分だった。ペナルティーエリアのやや外側でFW中野誠也からパスを受けると、左足で縦へ行くと見せかけて中央にカットイン。次の瞬間、右足のインサイドで丁寧にコースを狙ったシュートが、ゴールネットを揺らした。

「自分は左足が武器なのですが、相手はそれを警戒していたので、左足をうまく使って右足に持ちかえて、ファーサイドに決めました。その形はずっと練習してきたので、うまく決まって、とてもうれしかったです」

 柴山の記念すべきプロ初ゴールが生まれた。それと同時に、大宮の選手たちのギアも上がった。同点に追いついた後も水戸陣内に攻め込み、83分にはアカデミーの先輩でもあるFW奥抜侃志が決勝ゴールを挙げた。まさに、柴山の活躍が逆転勝利を呼び込んだ。

「急きょ、後半の頭からの出場でしたが、しっかりと準備していました。自分が出たら絶対に点を取りたい。それはどの試合でも思っていることなので、点を決めるために昨日から準備していたという形です。一番はチームが勝つためにプレーしているので、そのための点を今日決めることができたところは、自分でもしっかり評価したいなと思います」

 試合後、柴山は笑みもまじえながら水戸戦を振り返る。ただ、プロでの戦いはまだ始まったばかりだ。「今日はまだ、(プロとしての)1試合目。まだまだ満足せずに、これからさらに良い選手になって、チームに欠かせない存在になりたいです」と表情を引き締める。大宮のアカデミーで成長してきたからこそ、次はトップチームを引っ張っていく選手になるという責任もあるのかもしれない。

「アカデミー出身ということで、後輩たちに目標とされる選手になれるように頑張っていきたい。自分がしっかりプレーで後輩たちに示していきたいと思っています。自分の背中を見て、大宮に憧れる子どもたちが増えることを願っています」

 そして次節は、自身が昨年にJデビューした“ホーム”で、さらなる活躍を目指す。

「今日は残念ながらファン・サポーターの方々とは会えなかったのですが、次はホームで、ファン・サポーターがいる前でプレーできるのは心強い。さらに良いプレーをして、チームの勝利に貢献したいです」

 クラブの未来も背負う「48番」の挑戦は、これからも続いていく。

取材◎サッカーマガジン編集部 写真◎J.LEAGUE


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