増川隆洋が18日、オンラインで会見を開き、自らの言葉で現役引退を発表、思いを語った。2019年シーズン限りで京都サンガF.C.を退団し、その後は現役続行の道を探っていたが「ケジメをつけた」。会見途中では名古屋時代の盟友、楢崎正剛(名古屋クラブスペシャルフェロー)も登場。熱いエールを送られた。

上写真=福岡の自宅からオンライン会見を実施した増川隆洋(写真◎スクリーンショット)

2010年のJリーグ優勝は達成感があった

「すでにリリースさせていただいた通り、私、増川隆洋の現役引退を発表させていただきます。Jリーグ開幕前の忙しい時期に集まっていただいて、ありがとうございます。そしてこういう機会を与えていただいた京都サンガの関係者のみなさん、ありがとうございます。2003年に福岡でキャリアをはじめ、それから名古屋、神戸、札幌、京都と17年間を現役でプレーすることができました。この17年間は各チームのみなさんのおかげですごく充実した現役生活を送ることができました。本当に感謝しています。プロになる前に一緒に過ごした仲間や指導者の方々にも、この場を借りて感謝の気持ちを伝えたいと思います。本当にありがとうございました」

 会見は増川の感謝の言葉から始まった。2019年に京都を契約満了になって以降、現役続行の道を探っていた。それはまだ不完全燃焼の思いが残っていたからだという。ただ、所属クラブはなく、17日のリリースにもあった通り「ケジメをつける」ことになった。

「2019年はケガもあって思うように試合に出られず、契約満了になりました。その後、実際どうするかということですごく悩みましたし、迷いました。引退しようかなという気持ちもありましたが、自分の中で答えが出せず、最後のシーズンで1試合も出場できていないということもあって、自分としても物足りない部分がありました。周囲からもう少し頑張ってみればという話もあって、家族にもやってみたらと言われて、オファーがあれば続けてみようという気持ちになりました。それで現役続行を模索しました。しかし、うまくいかずに、そういう発表もできないままに今に至ったという感じです」

 増川は大阪商業大卒業後、2003年に福岡でデビュー。加入当初はMFだったが、翌年にはCBにコンバートされ、Jリーグ屈指のCBへと成長していくことになる。キャリアのハイライトはやはり、9年間在籍した名古屋時代だろう。思い出の試合を問われると、リーグ優勝を果たした2010年の一戦を挙げた。

「グランパスの時には非常に多くの試合に出させてもらいましたが、やっぱり優勝した試合はすぐに思い出せますね。アマチュア時代から含めて大きなタイトルを獲ったことがなかったので、そういう意味でもやり遂げた感、達成感はすごくあった1年でした。とても貴重な思い出があります」

 アウェーの湘南戦に1-0で勝利し、クラブに初優勝をもたらした。31節の優勝決定は当時の最速記録だった(11月20日)。この年、増川は32試合に出場。田中マルクス闘莉王、田中隼磨、阿部翔平と鉄壁のディフェンスラインを形成し、Jリーグベストイレブンにも選ばれた。「僕は優勝したチームのおまけかなってずっと思ってるんですけど」と本人は謙遜したが、間違いなく優勝の立役者の一人だった。

 キャリアを始めた福岡や名古屋だけではなく、神戸、札幌、そして京都と17年のキャリアで5つクラブでプレーした増川らしく、この日のオンライン会見には、全国各地のメディアが参加。J1昇格を経験した札幌時代については「僕自身、初めての雪国という部分で不安な点もありましたけど、サポーターの方々、チーム関係者の方々、その他にも友人がたくさんできて、温かく迎え入れていたきました。いつかまた行きたい。(2016年は)ディフェンスの部分で自分がしっかり真ん中をやれたので、責任もってチームを支えるということを意識していました」と振り返った。

楢崎正剛「マスがいるとデカくて相手のシュートが見えなかった(笑)」

画像: サプライズゲストとして楢崎正剛が登場(写真◎スクリーンショット)

サプライズゲストとして楢崎正剛が登場(写真◎スクリーンショット)

 メディアとの質疑応答を終えると、オンライン上にサプライズゲストが登場。名古屋時代の盟友、楢崎正剛だ。「嘘でしょ!(笑)」と驚く増川。楢崎は「長い現役生活、お疲れ様でした。お誘いを受けまして、コーヒーを飲みながら見ていました」と言って笑わせた。

「マスとは名古屋で一緒にプレーして、とても前が見づらかった。デカいから。まあ、なかなかシュートが見えない状況が多かったですけど(笑)、でも見えなくてもしっかり前でブロックしてくれて、少し出てきたシュートに対しては僕がカバーして。あとは横にいる闘莉王がまとめてくれる。そういう良い関係でプレーができました。自分の中でも良いシーズンを、一緒に長い間、過ごせたんじゃないかと思います。すごく感謝しています。名古屋のとても良い歴史を作れました。あとは試合もそうですが、マスがベストイレブンに選ばれて、Jリーグアウォーズの壇上でハイタッチできたことも良い思い出です。家族とも仲良くしてくれました。マスとはプライベートでの付き合いもあって、家族も助けられたと思います」

 尊敬する先輩から言葉に「こちらこそお世話になりっぱなしです」と謙遜するが、少し硬かった表情が一気に崩れた。心からの笑顔が二人の関係を物語る。

「子どもが好きということもあって、ウチの子どもの相手もしてくれて、本当にありがとうございました。またこれからの活躍も、自分ともどこかのタイミング、どこかの場所でまた、一緒に仕事ができることを少し夢見ながら。これからも頑張ってほしいと思い『マス』。マスは『増』のマスです。よろしくお願いしマス」と楢崎からエールを送られた。楢崎に続いては京都時代を含め、増川のプロ17年のキャリアの中で11年、ともに仕事をした、京都の松浦紀典ホペイロも登場。

画像: 京都の松浦紀典ホペイロも登場(写真◎スクリーンショット)

京都の松浦紀典ホペイロも登場(写真◎スクリーンショット)

「おはようございます。増川選手、現役生活お疲れでした。マスの17年間の現役生活の中、11年間を一緒に過ごすことができて、自分も楽しい時間を過ごすことができました。この大きなスパイクをもう磨くことがないのが少し残念です」と増川が履いていた大きなスパイクを持参し、「だいぶ面積が広くて(メンテナンスに時間がかかった)。でもそのぶん、楽しい時間を共有できました。これからの人生も頑張ってください」とエールを送られた。

 現在、増川は福岡で児童福祉関係の会社の経営に力を注いでいるという。「今は少しずつ事業所を増やし、関われる子どもの数を増やしていきたいと思っています。それをやりつつ、別でサッカースクールなどもやれたらいいなと思っています。順調です」と現状を説明。今後は、サッカーへのかかわりを深めていきたいと展望を語った。

増川隆洋(MASUKAWA Takahiro)
■生年月日:1979年11月8日
■出身地:兵庫県
■身長/体重:191cm/93kg
■ポジション:DF
■経歴:津田小学校→飾磨西中学校→琴丘高校→大阪商業大学→アビスパ福岡(2003ー2004年)→名古屋グランパスエイト/名古屋グランパス(2005-2013年)→ヴィッセル神戸(2014-2015年)→北海道コンサドーレ札幌(2016-2017年)→京都サンガF.C.(2018-2019年)


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