上写真=普段は落ち着いた語り口だが、試合中は熱血漢。長谷部茂利監督が昇格へと導く(写真◎J.LEAGUE)
「それが決勝戦になったらいいな」
「ここのところ、自分たちの色を出し切れていませんでした。でも、ヴェルディ戦と大宮戦では出せるようになって、それが結果につながるかどうかはシュートが入るかどうかもあるのでまた別ですが、色を出すことができるようになって、もう一回自分たちの戦い方が、復調というか戻ってきたなと思います」
11月25日の第36節東京ヴェルディ戦、29日の第37節大宮アルディージャ戦と連続で、しっかりとした守備と素早い攻撃というアビスパ福岡のベースの部分が甦ってきたという。J2昇格に向けてクライマックスを迎えるこのタイミングになってチームが上向きになるというのは、何とも心強いことだ。
「いきなり上手になったり、いきなり何かができるようになることはないですから、できることをやろう、それを徹底していこうと言い続けてきました。こういう緊迫した空気が大好きで、その中で点を取ります、アシストします、守備で救えます、という選手が出てくるのを期待したいですね。選手たちにはそういう風に問いかけていきたい」
残り試合が少なくなって昇格への距離感を測っていく中で、特別なことをする必要はない、という達観は、選手たちの自覚をより刺激するだろう。その最たるものが大宮戦だったのではないか。相手にうまく守られながらも1-0で逃げ切って勝ち点3を手にした勝負強さは、昇格への最大の武器になる。
「抑えられてしまうところは多々ありましたけど、拮抗したゲームに持ち込めたという意味では、順位はうちが上ですが、ケガ人が多い大宮さんに対して五分五分にできたことで、うまく勝ちゲームに持っていけたなと」
この「五分五分」という単語が、長谷部監督の頭脳を示すキーワードになりそうだ。
「(大宮に最終ラインのギャップを突かれたのは)これまでも同じようなシーンはときどき出るんですけど、修正してゼロ失点で抑えることができました。崩されたとしてもシュートの場面で止めるというところを継続して、崩されずにしていきたいと思います。パーフェクトに相手コートで全部をやるのは理想ですけど、なかなかできないですからね。五分五分なんです。どのチームとやっても五分五分に持っていけることが勝利に近づくこと。選手たちはよくやっていると考えています」
つまり、試合ごとに対戦相手とのパワーバランスがイーブンであれば、勝機は生まれてくる、という思考法だ。無理やり上回ろうとして余計な力を込めることはしない。すべては自分たち次第、という軸がぶれていないのだ。
残りは5試合だが、見る側としてどうしても注目したくなるのは、最終節の相手。現在首位の徳島ヴォルティスだ。
「現状で感じているのは、それが決勝戦になったらいいな、ということです。それ以上でもそれ以下でもないですね」
ここから4試合でまずは昇格を決めておいて、最後の最後で勝ったほうが優勝、という状況に持ち込めれば、就任1年目の長谷部監督にとって最高のクライマックスになるだろう。