上写真=鈴木監督は時折笑顔を交えながらも、引き締まった表情で歯切れよく抱負を語った(写真◎スクリーンショット)
「クリエイティブさがほしい」
2000年9月から2002年まで監督を、2004年9月から11月まで監督兼強化部長を務めて以来だから、16年ぶりの再々登板。鈴木政一氏は「強化本部長兼監督」という形で就任し、10月1日の午後に初めての練習を行った。選手たちにはまず、こんなことを伝えたのだという。
「目指すところ、目標を共有したい。そのためにもいまチームにある問題点、改善点を共有しました。すべてをいきなりクリアするのは難しいので、慌てずに一つひとつ、優先順位を考えながらクリアしていきたいと思っています。プロの集団ですので、結果にこだわらなければいけないのはもちろんです」
磐田はここ6試合は3分け3敗と勝ち星なし。小野勝社長は「折り返しのあとの2連敗が大きかった」と第22節モンテディオ山形戦の0-1、第23節レノファ山口戦の0-3という結果が決定打となったことを明かした。
鈴木新監督が強調したのは「改善」の2文字だ。初日の練習ではまず、守備にフォーカスしたという。
「守備の部分でいくと、ボールサイドで数的優位なのに打開されたり、数的不利でも同数でも突破されている。そこを改善しないと。3対1でもボールを動かされてしまうことがあって、そこは奪いきらなければいけない。ポジションを修正しながらボールサイドは同数に持っていかなければ」
もちろん、攻撃面での改善も必要で、「相手がどう守備しようが、それをしっかり判断してチャンスを作るようなクリエイティブさがほしいし、オンとオフの判断、その精度を高めていくことによってシュートや得点までのレベルが上がっていくのではないかと思っています。個人の特徴を生かせればより良い判断につながっていくと思います」と話す。
この「オン・オフ」は鈴木サッカーのキーワードだ。ボールとは直接関係のない状況にある選手が何をするか。その判断が重要になる。
「うちの場合はロングボールが多いんですけど、ボール保持者の状況によって助けるオフのサポートの動き、これがものすごく大事になってきます。攻撃ではルキアンや大森のようなドリブルも絶対必要なんですが、それだけだと守られてしまう場面がある。そこでコンビネーション、パスサッカーも必要になってきます。オンとオフを共有してコンビネーション良くサッカーができるようにしていかないと。90分間ではオフの時間がとんでもなく長いわけで、どう見て判断してアクションを起こすのか、それが大事なんです」
難しいのがその「改善」の落とし込みだ。過密日程によってどのチームも試合のない日は休息やコンディション調整に追われ、戦術的なトレーニングに当てる時間が極めて少ない。
「頭の回転、考えること優先的にやってもらえれば一番いいんですけど、今日は練習初日で選手がハードにプレーしてくれているので、疲れが心配です。でも、意識を持っているときに与えることが一番いいと思うんですよね。コンディションも考えながらですが、トレーニング内容も考えていい環境を選手たちにピッチで与えたいと思っています」
「改善」。そのための「考える」意識。そこがスタート地点だ。
監督就任に当たっては「めっちゃ不安だったですよ」と話して報道陣を笑わせながらも、新しい挑戦に終始、表情を引き締めた鈴木新監督。初陣は10月4日、ホームでの京都サンガ戦だ。