9月2日、明治安田生命J2リーグ第16節が開催された。フクダ電子アリーナではジェフユナイテッド千葉とアビスパ福岡が対戦。先制しながら千葉に逆転を許した福岡だったが、アディショナルタイムに追いつき、勝ち点1を持ち帰った。

上写真=90+6分にフアンマがヘディンゴールを決め、福岡が土壇場で追いついた(写真◎J.LEAGUE)

■2020年9月2日 J2リーグ第16節(観衆1,758人/@フクアリ)
千葉 2-2 福岡
得点:(千)ゲリア、新井一耀
   (福)増山朝陽、フアンマ・デルガド

・千葉メンバー◎GK新井章太、DFゲリア、チャン・ミンギュ、新井一耀、安田理大、MF田口泰士、小島秀仁(71分:見木友哉)、堀米勇輝(65分:米倉恒貴)、FW船山貴之(90+5分:櫻川ソロモン)、山下敬大(90+5分:鳥海晃司)、クレーベ(65分:熊谷アンドリュー)

・福岡メンバー◎GK村上昌謙、DFエミル・サロモンソン、ドウグラス・グローリ、上島拓巳、輪湖直樹、MF増山朝陽(79分:三國ケネディエブス)、松本泰志、田邉草民(79分:鈴木惇)、菊池大介(56分:遠野大弥)、FW木戸皓貴(73分:北島祐二)、東家聡樹(56分:フアンマ・デルガド)

足が地に付いてしまったようだった(尹監督)

 先制したのは福岡だった。開始7分、CKの流れから相手のスキを突く。千葉守備陣がクリアしたボールをボックス手前で田邉が競り合ってヘディング。頭上高く上がったボールの落下地点に入った木戸がバックヘッドで前方へ流すと、GK新井が触るよりも早く増山が反応し、ボールをゴールに蹴り込んだ。

 開始早々からロングボールを交えつつ、圧力をかけた福岡が狙い通りに得点に成功した。対する千葉はここまでリーグ15試合で開始20分までに失点したことはなかったが、不用意な形で先行を許すこととなった。

 ただ、この失点で千葉が目を覚ますことになる。20分過ぎからは球際で戦い、切り替えの早さで上回り、厚みのあるサイド攻撃で福岡ゴールに迫っていく。同点ゴールが生まれたのは42分、前半終了間際のことだった。

 右サイドで得たFKの場面。田口が滞空時間の長いボールを入れると、ボックス左で待っていたゲリアが相手を押さえながら頭を合わせ、GKの頭上を抜くシュートを決めた。これはゲリアにとってJ初ゴールでもあった。

 良い時間帯に追いついた千葉は、後半に入ってもアグレッシブな姿勢でプレーを続け、好機を生んでいく。開始早々に山下、50分に安田のクロスからクレーベ、その1分後に再び安田から船山。次々と福岡ゴールに襲い掛かった。そして57分、ついに『次の1点』を手にする。

 今度もFKからだった。堀米が左サイドからアウトスイングのボールを入れ、ボックス内右で待っていた山下がヘッドで折り返す。収めた船山がタメを作って後ろに戻し、サポートに来た堀米が再び柔らなボールをボックス内に送ると、ファーサイドに新井一耀が勢いよく飛び込んでヘディング。見事、勝ち越しに成功した。

 その後、福岡も選手を交代させつつ反撃に出るが、千葉も集中した守備でゴールを許さず。時計は90分を回り、そのまま試合を終えるかに思われた刹那、ドラマの幕が開ける。主役を演じたのは、途中出場し、パワープレーで怖さを発揮していたフアンマだった。5分と表示されたアディショナルタイムをすでに過ぎた90+6分。左サイドのスローインの流れから松本がゴール前に素早く入れると、フアンマが飛び込み、ヘディング。ボールを流し込んだ。

 千葉にとって悔やまれるのは、技巧派の松本に寄せ切れずにフリーでクロスを上げさせてしまったことだ。その直前、ライン際で人数をかけ、相手を追い込んでいったんはボールがラインを割った。そこで福岡はすぐさまリスタートを実行したが、千葉の選手たちは一瞬、対応が遅れてしまった。

 それまで集中した守備をしていただけに、千葉にとっては悔やまれるプレーになった。一方で、福岡は最後の最後まであきらめず、武器であるフアンマを活用し切って勝ち点を手にしたと言える。

 歓喜に沸く福岡ベンチ。対照的に肩を落とす千葉ベンチ。千葉は試合再開後、すぐにゴール前にボールを送り込んだが、福岡守備陣に跳ね返され、試合終了の笛が鳴った。

「選手たちは本当に一生懸命プレーしてくれたんですが、良い結果を持ってこれなかった。本当に惜しい。逆転までして…あの一瞬で失点したのが信じられない。集中を欠いたというか、最後に足が地に付いてしまったようだった。時間的な部分を有効に使わなければいけなかった。あまりにも惜しい」(尹晶煥監督)

「先制しましたが、セットプレーで失点し逆転されました。ただ最後、自分たちの気持ちも含めて準備してきたことを出し、最後はパワープレーですけども、得点を取ることができた。アウェーで勝ち点1を取れたことはよかった。次につながると思っています」(長谷部茂利監督)

 両チームの指揮官のコメントの違いが、ショックの大きさを物語る。千葉は連敗を3で止めたものの、あまりにも痛いドローになった。対する福岡は敗色濃厚の状況から勝ち点をつかみ取ったポジティブなドロー。悔恨の念を胸に残して次に向かうか、収穫を携えて次戦に臨むか。どちらがいいかは、言わずもがな。今夜の引き分けは、双方にとって意味合いが大きく異なる引き分けになった。

現地取材◎佐藤 景 写真◎J.LEAGUE


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