上写真=守備での貢献度が高い藤田。すでに5試合で先発している(写真◎Getty Images)
10カ月前の自分へ
昨年9月14日のことだった。東京ヴェルディのアカデミー「最新作」、17歳の藤田譲瑠チマという才能が86分から初めてプロのピッチに立った。相手はアルビレックス新潟である。
そして7月29日、東京Vはその新潟を味の素スタジアムに迎える。10カ月後の藤田は見違えるように力強くなり、東京Vの中盤で守備のキーマンになった。
「あの試合は自分の中で苦い思い出になっちゃったので、成長している姿を見せられるのは新潟戦が一番だと思っていて、それをみんなに見てもらうには勝って勝ち点を積み上げたいんです」
今年はすでに7試合すべてに出場していて、しかも5試合が先発出場。これだけで永井秀樹監督の信頼の厚さが見て取れるだろう。
主力として戦う2020シーズンは、ここ3試合は2勝1分けと負けなしで、誰に聞いてもチーム状態が上向きだと手応えを口にする。もちろん藤田も、なのだが、昨年4試合、今年7試合というキャリアだから、まだまだチームに乗せてもらっているという感触しかないという。
「(去年と)そんなに変わったところは自分ではないと思っていて、でもチームとして試合を重ねていて間違いが少なくなってきています。それが大きいと思います」
そんな自分の仕事は「相手の攻撃の芽を積むこと」と強く自覚しつつ、目の前の課題は「縦パス、裏へのボール(を送ること)はずっと言われている。自分に余裕を見つけながらやっていきたい」「(前節のモンテディオ山形戦では)カウンターを抑えられるシーンがあったので守備は良かったけど、攻撃の部分でもらって前につなげられる仕事ができたらよかった」「自分の立ち位置が少しずつ違ってきているので、そういうところ直せばスムーズにできたと思う」と明白だ。攻撃への第一歩。
10カ月前の自分に胸を張って成長を報告できるかは、この攻撃の部分にかかっているかもしれない。
新潟へのイメージも膨らませている。
「強い外国人選手がいて、一つ年上の本間至恩さんがうまいなと思います。そういうところに気をつけたい。守備力を生かして攻撃の芽を摘んで、自分たちの時間を増やしたいです」
「(前線の長身FWをターゲットにしてくることについて)それはそれでうちのセンターバックはめちゃくちゃ強いので、自分はそっちのほうが楽かなと思います。そこで勝てば自分たちのボールにできるので、そこの心配はしていないです」
「相手もフォーメーションが似ていても、チームによって狙っているところが違うので、それはやってみないと分からないですからね」
自惚れず、明るく楽しく、プレーする喜びを表現する背番号36。大人への階段を確実に登っているこのタレントを見逃さない方がいいかもしれない。