上写真=FC琉球戦で先制点を挙げた國分伸太郎(写真◎J.LEAGUE)
文◎北條 聡 写真◎J.LEAGUE
眠気を誘うポゼッションではない
もう、圧巻の一語だった。
ギラヴァンツ北九州(J2)が展開する疾風怒濤のフットボールだ。先週末のリーグ戦で4-0の圧勝。目の覚めるようなゴールラッシュを演じ、FC琉球を木っ端微塵に打ち砕いた。
衝撃は先制ゴールだ。
左サイド奥のスローインからテンポよくつないだパスは実に29本。しかも、GK以外の10人がことごとく絡み、フィニッシュまで持ち込んだのだから恐れ入る。所要時間は78秒。つまり、1分以上も敵にボールを触らせなかったわけだ。
まるでギラヴァンツ風ティキタカである。
この見事なパスワークを締めくくったのが國分伸太郎だ。中盤からライン裏へと走り込み、鋭いアーチを描いた髙橋大悟のクロスをヘッドで押し込んだ。まさに会心の一撃。これでチームは完全に波に乗ったわけだ。
ティキタカと書いたが、眠気を誘うポゼッション(保持)とはワケが違う。急がば急げ。ボールを縦に動かすプログレッション(前進)が売り物だ。とにかく、ワンタッチの鋭い縦パスがガンガン入る。そこから高速のコンビネーションを使ってブロック(防壁)の攻略を試みるのだ。
仕掛けが、ある。
独特の立ち位置だ。基本布陣の4-4-2など、単なる数字の羅列。敵の守備隊形に応じて各々が所定のポジションを離れ、巧みにトライアングルをつくっていく。パスが回りやすいわけだ。
一大特徴は中央のレーン。ここに人を集めて、縦パスのチャンネル(経路)を確保し、中央突破を試みる。スイッチを入れるのはド真ん中に陣取るピボットの國分。この人こそプログレッションのキーパーソンだ。両足を器用に操って好パスを連発する。その男が琉球戦で値千金の先制点まで奪ったのだから恐れ入る。
ただ、パスワークだけで敵を圧倒したわけではない。際立ったのは相手ボールの即時奪回。つまりはカウンタープレスだ。速い、速い。攻から守への切り換えとボールへのアプローチがとにかく速い。しかも球際で激しくファイトし、縦パスを次々と潰し、こぼれ球も片っ端から拾っていく。ポゼッションが強みの琉球にほとんど反撃の余地を与えなかった。
しかも、タイムアップの瞬間まで休みなく走りまくっていたのだから凄い。相手をハイテンポの攻守に引きずり込み、完膚なきまでに叩きのめした格好。とりわけ、後半のパフォーマンスは出色の出来栄えだった。それも、今季J2に昇格したばかりのチームが――である。
引くな、下がるな。前へ、前へ。
そんな前のめりのスタイルは香川真司が活躍した頃のボルシア・ドルトムント(ドイツ)のそれとちょっと似ている。電撃のゲーゲンプレッシングはもとより、ワンタッチの縦パスを使って一気に中央突破を試みる独特の仕掛けもそうだ。