10月17日の明治安田J1リーグ第10節で行われた『東京ダービー』。FC東京が東京ヴェルディに4-0で快勝した。これで5連勝と波に乗っているが、目立ったのは稲村隼翔のプレーぶり。キャプテンマークをつけて臨んだ一戦で、重要な「3つのハイライト」で勝利の立役者になった。

上写真=稲村隼翔が「クリーンシート5連勝」に大きく貢献している(写真◎J.LEAGUE)

■2026年10月17日 J1第10節(観衆28,945人/@味スタ)
東京V 0-4 FC東京
得点:(F)アレクサンダー・ショルツ、マルセロ・ヒアン、長倉幹樹、ダニ・ゴメス

「本当に周りの選手たちに恵まれている」

 FC東京のセンターバック、稲村隼翔が10月17日の東京ダービーで見せた「3つのハイライト」が、その存在意義を高らかに示した。

 第1のハイライトが試合の流れを決定づけた。

 18分、ボールの競り合いに頭でクリアしようとしたところに東京ヴェルディの染野唯月の右足が伸びてきて接触、染野にはレッドカードが提示された。公式記録には「著しく不正なプレー」を示す「S1」が記載された。

「あの場面は頭を引っ込めたら負けだと思って行きながら、でもケガをしないように、という感じでした。ちょっとガッツポーズが早すぎでしたけど(笑)、でもこういう試合だからこそ、ああいうプレーは大事だと思うので、逃げずに行ってよかったな、と」

 恐怖心を克服する強い思いが、チームに早い時間の数的優位をもたらした。

 第2のハイライトはパスだ。それがゴールにつながったのは、68分の3点目。

 最終ラインの左で顔を上げると、逆サイドに大きなスペースが見えた。そこに得意の対角パスを左足で鋭く送り込む。ゴールラインの直前ぎりぎりで大森理生が追いついて折り返すと、走り込んできた長倉幹樹が右足で突き刺した。勝利を決定づけるゴールを導いてみせた。

「分析でもあそこが空くという情報はありましたし、スタッフの方が用意してくれた通りにできました。(交代で入ったばかりで)理生もあれがファーストタッチだったと思いますけど、うまくやってくれたらな、という感じでした」

 染野の退場によって東京Vはそのまま4-4-1の布陣にしてきたため、相手の最前線から制限をかけられることはほとんどなくなった。アレクサンダー・ショルツとともに、センターバックが余裕を持って運んで、左右に振って、中央に差し込んで、というパスで、この3点目のシーンに限らず、自在に攻撃を構築していった。

「ヴェルディがスライドに重きを置いているのは分析でも分かっていたので、相手をうまく揺さぶりながら、前に出てくるタイミングで差しながら、あとはクロスのところで決めたいなという感じでした」

 ただ、ハーフタイムに松橋力蔵監督からある指摘が入った。

「もっときれいに縦に差したかったんですけど、ハーフタイムにリキさん(松橋監督)から『やりすぎるな』ということを言われて」

 松橋監督がそんな言葉を伝えた真意は、「もっといいパスを出せる」という期待だった。

「通せる部分は後半には非常に多くなったというところはありつつ、ただやはり、フリーで時間もあって少しテンポを鈍らせるというか、相手の陣形を中央にしっかり整えた状態で差し込むことはいくつかあった中で、やはりもっと広げたタイミングで、本当に欲張らずにシンプルにやっていこうと。あとは、相手のサイドの選手が少し前がかりになった背中をどう取っていくか。相手を押し込んだ状態でそこを取りに行くのではなくて、食らいつかせるぐらいのポジションを取りながら、欲を言えばもっともっといいパスを、グラウンダーだけではなく空間をうまく使いながら背後を突くボールも出せますから、そこはもう少しあってもよかったのかなと思います」

 それは稲村自身も反省点として痛感していること。

「もっと得点につながるパスを出したい思いもありますけど、前の選手を信じて簡単に渡すところも大事だと思うので、今日はいい積み上げができたと思います」

 ゴールに直結するような「花形のパス」だけではなく、その一つ、あるいは二つ手前の「地味だが効くパス」の必要性を自らに求めたのだった。

 そして、第3のハイライトはクリーンシート。5連勝をすべて無失点で手にするのはクラブの新記録だ。センターバックとしては何よりの勲章である。

「何試合連続かというのは選手たち自身、僕自身もそうですけど、まったく気にしていないんです。1試合1試合失点しなければ勝てるという自信がいまチームにあるので、それだけです」

 ゲームキャプテンとして試合に挑み、相手を退場に追い込み、パスでゴールを導き、クリーンシートの立役者になる。今年1月にセルティック(スコットランド)から日本に戻ってきてFC東京に加わり10カ月、充実の日々だ。

「本当に周りの選手たちに恵まれているので、自分の成長曲線は上がっていると感じています」

 それがどこまで高く伸び上がるのか、行く末が楽しみだ。


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