5月16日の明治安田J1百年構想リーグで、柏レイソルが横浜F・マリノスを1-0で破った。決勝ゴールを挙げたのは汰木康也。アカデミー時代に育ったクラブへの恩返し弾は、移籍後初ゴールになった。「特別な場所」という日産スタジアムで決めたゴールへの思いとは。

上写真=汰木康也が特別な場所で結果を残した(写真◎J.LEAGUE)

■2026年5月16日 J1百年構想リーグ第17節(観衆:26,122人@日産ス)
横浜FM 0-1 柏
得点:(柏)汰木康也

「初」シュートで「初」ゴール

「ボールが良かったんです」

 1-0でもぎ取った勝利の大事な決勝ゴールについて問われると、汰木康也はまず仲間を称えた。

 42分、久保藤次郎の右からの高速センタリングに対して中央に入っていって、左足でていねいに押し込んだフィニッシュ。この日のチーム初シュートが、汰木にとって柏レイソルに移籍して初めてのゴールになった。

「いつもあそこに飛び込もうと自分に言い聞かせて試合に入るのに、いざ、そのシーンになるとマイナスに行っちゃうことが多くて、今日は体が動いてあそこに入れてよかったです」

 ニアには垣田裕暉が走り込み、中央に汰木、その後ろから三丸拡が入り込んでいた。

「3人が突っ込んでいたし、ああいうシーンだとゴールも生まれますよね」

 6連敗と苦しんだ時期にはゴール前に選手が少ないという大きな課題があった。それを克服する象徴的な「突っ込み」でもあった。

日産スタジアム「初」勝利

 横浜F・マリノスのアカデミーで育ち、この日産スタジアムは「小3から高3まで通っていた」という場所。10年にわたってトリコロールに染まっていた。

 それでも、「ここで育ったから、特別な場所。特別な思いを持って試合に入りましたけど、ゴールを取れればいいな、ぐらいに思っていました」と気負いすぎていたわけではなかった。

 このスタジアムではこれまで、浦和レッズの一員としてリーグ戦で2度、プレーしているが、ともに黒星。つまり、汰木にとっては特別なスタジアムで手にする初めての勝利で、それをもたらしたのが自らのゴールだったというめぐり合わせ。

「このスタジアムでゴールを取れたことは自分にとって特別です」

 喜びをかみ締めた一方で、前半のみで交代という憂き目にもあった。リカルド・ロドリゲス監督からはきちんと説明されたという。

「もう少し前からプレスに行きたい、強度を上げたい、と言われました。前半も最後の方は相手ディフェンスラインにプレスがかからなくて進入されてしまうシーンも増えていましたけど、でも、ピッチの中で話し合ってコミュニケーションも取れていましたし、改善できると思っていたら、交代と言われて。まあ、しょうがないですね」

 特別なゴールの喜びと悔しさとがないまぜになった1日になったが、それも勝利のためと理解して次に進むしかない。

180度から360度

 柏で与えられているのは、1トップの周囲に立つシャドーのポジション。同じシャドーの小泉佳穂とともに、ゲームにリズムをもたらしつつ、ゴールも奪うことが期待されている。

 汰木といえば、タッチライン際を素早く軽やかに突破する風のようなドリブルが代名詞だが、30歳にしてシャドーで新たな自分と向き合う日々だ。

「選手はローテーションするから、本当はタッチラインを背負ったほうが得意なんですけど、いまの役割だと中での仕事が本当に大事。自分が後ろに下がっていって、ゴール前にフォワードと両ウイングが突っ込むようなシーンが多くて、自分でゴールを取りたいけれど割り切ってやっています」

 柏ではポジションの入れ替わりが柔軟で機能的。ボランチが飛び出してシャドーが下がったり、ウイングバックを押し上げてシャドーがカバーするような複雑なローテーションを繰り返して相手を惑わす。汰木も自慢の突破力を披露するよりも、ボールを受けてさばいてテンポを刻むことが大事な仕事になっている。

「そこで自分のボールの収まりというか、流れを作るという強みを出せる部分でもあるので、あえて低い位置にいっています」

 今回のゴールも「中に入れてよかったです。ああいうときに間に合わないことが多いので」と振り返るが、ワイドではなく中央にポジションを取っていたからこそ、あの場所に走り込むことができたとも言えるのだ。

 タッチラインを背負った「180度」の世界から、中央に入って「360度」の視界でプレーする楽しさと難しさ。進化の途上で、それをいま味わっている。


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