上写真=遠藤渓太のシュートを河原創と橘田健人で挟んでブロック(写真◎J.LEAGUE)
強くなった時代のイメージ
スコア以上の完敗だった。
川崎フロンターレがFC東京に1-2で敗れた、2月21日の「多摩川クラシコ」である。
初戦で柏レイソルとの打ち合いを5-3で制し、続くジェフユナイテッド千葉とのゲームは0-0からPK戦9-8で辛くも勝ち点2を手にしたものの、相手に押されっ放し。そして、FC東京戦で完敗を迎えるのだった。
攻守にわたって切り替えが遅い。球際でも劣勢に立たされる。根本的なところで精彩を欠いていたことが最大の敗因だろう。本来の川崎Fらしいボール保持ができず、攻撃が単発だった。
注目したのはボランチのコンビだ。最初の2試合では山本悠樹と河原創が先発で組んでいたが、FC東京戦では山本ではなく橘田健人を河原と組ませている。ともに中盤でボールを奪えるという特徴を持つ2人である。長谷部茂利監督は、前節から先発を2人入れ替えて橘田と家長昭博を起用したことについて、「90分で勝ちたい思いが、私自身もそうですし、チームとして必要な勝ち点なので、それを取るために調子のいい選手をスタートに使いました」と説明している。
しかし、それほどの効果はない。奪っても相手を苦しめるような配球には至らなかった。
英国では中盤の選手をタイプによって『ボールプレーヤー』と『ボールウィナー』と呼ぶことがある。ボールを扱う選手とボールに勝つ選手、つまりテクニックがあって周りが見えるタイプと、運動量豊富でボールを奪う術に長けている選手、という意味だ。もちろん両方の要素を兼ね備える選手もいるわけだが、大別するとそのどちらか、あるいは特徴が一方に片寄っている選手、を指す言葉である。
中盤の中央に2人を置くなら、バランスの点からも理想的なのは1人が『ボールウィナー』で、もう1人は『ボールプレーヤー』だろう。そしてこの日の川崎Fは、2人とも『ボールウィナー』と言える選手だった。
近年ではボランチが2人とも『ボールウィナー』のケースも多い。例えば、昨季の鹿島アントラーズで三竿健斗と知念慶の強力な『ボールウィナー』の組み合わせがJ1制覇の原動力になったように、プレー強度の高さで勝負するチームにおいてはこの種のコンビで結果を得ることができる。
しかし、川崎Fはどうだろう。少なくともこの試合では『ボールウィナー』の2人を並べても強みにならなかった。FC東京の好調な攻撃を食い止めるための人選だったとしても、相対する橋本拳人、常盤亨太のボランチコンビに強度でも勝てなかった。
長谷部監督はかつての川崎Fのようなスタイルを目指してはいるわけではないのだろうが、選手の質やプレースタイルを思えば、やはりあるレベルのポゼッションができなければ苦しくなる。山本の調子が上がらないのであれば、思い切って『ボールプレーヤー』の大関友翔を先発から使ってみるのも面白いのではないか。このJ1百年構想リーグは新たな策を試すには絶好の機会なはずだ。
2人の『ボールプレーヤー』でドイスボランチが成立する場合、そこには華麗なパスサッカーが展開される。強かった時代の川崎Fがまさにそうで、中村憲剛と大島僚太で生まれた展開は強く、美しかった。もちろん、守田英正や田中碧がボランチに入って中村が1列前に出ることも多かったが、川崎Fのイメージを象徴するような組み合わせだろう。
インテンシティの強さを前面に押し出すチームが増えて、事実、そういうチームが結果を出している。だから、そのやり方を否定することはできないが、川崎Fには時間をかけてていねいに積み上げながら強くなった時代のイメージが色濃く残り、おそらくはサポーターの多くがそれを望んでいるはずだ。
時代とともに変化していくものだとはいえ、それがクラブの文化とも言うべきものでもある。だからこそ、強度勝負に偏らずに勝つ川崎Fを見たい思いは強い。
文◎国吉好弘
