8月31日の明治安田J1リーグ第28節で、アルビレックス新潟が浦和レッズに0-1で敗れた。これで9試合も勝利に見放されているが、上昇の兆しがないわけではない。ブーダの絶好機を生み出した48分の一連の攻撃が、その象徴的なシーンだ。

上写真=サポーターへの感謝を込める堀米悠斗。左サイドを活性化させた(写真◎J.LEAGUE)

■2025年8月31日 J1第28節(観衆:30,968人@埼玉ス)
浦和 1-0 新潟
得点:(浦)マテウス・サヴィオ

目指すべきものの輪郭

「10試合しかないと考えるのか、10試合もあると考えるのか」

 入江徹監督が新型ウイルスで体調を崩して、代わりに指揮を執った吉本岳史ヘッドコーチは、まるで下を向かなかった。

「その考え方で違うと思いますけども、我々は最後の最後まで選手もあきらめていませんし、まだ全然チャンスはあると思っているので、選手には来週からいい練習をして、しっかりつかみ取ろうという送り出しをしました」

 浦和レッズにカウンターから決勝ゴールを許し、0-1で敗れて勝ち点の積み上げはなし。しかし、残り10試合で残留を果たすためのファイティングポーズを引っ込めるつもりはない。

 まったくやり合わないまま敗れたわけではない。でも、1点が遠いのも事実。手にしたものと欠けているものの両方を感じながら、キャプテンの堀米悠斗は慎重に言葉をつなぐ。

「ブーダもかなり悔しがってたし、チームメートに謝ってたけど、この敗戦はみんなのもの。もっとチャンスを作ってあげないといけないし、(失点を)0で抑えないといけない。ただ、全体のやりたいことというか、やるべきことはだいぶ合ってきた感じはします。試合数が少なくなってきて、そんなのんきなことを言っていていいのかというのはありますけど、これを続けていく、より精度を高めていくという、自分たちが目指すべきものの輪郭が見えてきたと」

 ブーダが悔やんだのは、後半が始まってまもなく、48分のシーンだ。ゴール中央、至近距離から狙った絶好のフィニッシュは、GK西川周作にストップされた。ラストパスを出したのが、堀米だ。左で回して押し込んで、一度取られたが、すぐに奪いに出て堀米がインターセプトに成功したのだ。3試合ぶりの出場で左サイドの攻撃を活性化させた。

「前半から左サイドは割と人数をかけてポケットを取りにいく意識は強かったので、あのシーンもその延長線上で奪われた瞬間にすぐプレスに移行したときでした。うまく崩しきれなくても、取られたあとにあの位置で奪い返しにいけばチャンスになるのは樹森(大介・前監督)さんのときから取り組んできたこと。ああいうシーンを増やしていきたいですね。あれだけ人数をかけてしっかり崩そうと意志を持ってプレーすれば、次にやるべきことがはっきりとするから」

 図らずもそう語った言葉は、監督が代わったとしても植え付けたものは残るという事実を示している。樹森前監督だけではなく、それ以前から積み上げてきたことーー人数をかけて押し込んで崩していくこと、高い位置から奪い返しにいくことーーが形になったシーンだった。

「後半もいけるという手応えもやりながら感じていましたけど、結果、得点0なので、まだまだ自分たちの力不足。10回打って入らないんだったら、20回打たないといけないし、シュートが入るか入らないかもフォワードだけの責任ではない。みんなでどれだけチャンスを作ってあげられるか、もしくは2列目、3列目から追い越してゴール前に入っていけるか。そこがまだまだチーム全体として足りない」

 48分のようなシーンを、残り10試合でどれだけ作れるか。公式記録では、この試合で放ったシュートは13。浦和の10を上回った。8試合勝利がないが、ここ3試合は川崎フロンターレ、鹿島アントラーズ、そして浦和という上位チームに対して決して弱腰なパフォーマンスではなかった。運命の「ラスト10」で、上向きになってきた内容を結果に結びつける。


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