8月24日の明治安田J1リーグ第27節で、京都サンガF.C.がFC東京を4-0という大差で下してみせた。4つのゴールのうち2つに共通するのが、相手のビルドアップをきっかけに奪ったこと。そこに、いまの京都の強みが凝縮されていた。

上写真=6試合ぶりに先発した松田天馬は4点目を生んだ鋭いプレスなどで大きく貢献した(写真◎J.LEAGUE)

■2025年8月24日 J1第27節(観衆:27,591人@味スタ)
FC東京 0-4 京都
得点:(京)ラファエル・エリアス3、鈴木義宜

「僕も初めての経験」

 京都サンガF.C.がFC東京から奪った4つのゴールのうち、2つに共通するのが、相手のビルドアップがきっかけだったことだ。

 2点目となるPKは、岡哲平が横につないだゴールキックから、受けたGKキム・スンギュに対してラファエル・エリアスが奪いに出たところで倒されて得たものだった。ダメ押しの4点目も、ビルドアップの局面でキム・スンギュが東慶悟へ縦に短く出したところに松田天馬が寄せてまんまと引っ掛け、ラファエル・エリアスが蹴り込んでハットトリックを達成してみせた。

「相手のゴールキックが チャンスになる。それはいままでもずっと愚直に繰り返していました。それが今日みたいに1点、2点につながることがある」

 こう切り出したのは曺貴裁監督だ。そして、続ける。

「ああいう形が、ゴールの一つではなくてアクシデントと見られる向きがあって、監督としてすごく残念に思うときがあります」

 ゴールキックから小さくつないでビルドアップしていくスタイルが、最新の戦術であり、流行の一つとしてもてはやされていること、そこで失点するのはあくまでゴールキックやビルドアップのミスに過ぎず、奪った側のていねいな戦略や努力の成果だと認識されにくいことへのアンチテーゼでもある。だから、こう断言するのだ。

「こうしてアウェーゲームで体現できたのは、勝ったことよりもよかったな、と思っています」

 ゴールを奪うことも、首位に立っていることも、幸運でもなんでもなく、やるべきことをやり続けているからだ、という自信につながっていく。

 そしてそこに、選手の信じる力と実行力が力強くシンクロする。その一つが、松田が鋭いプレッシャーによってチームのアイデンティティを体現した、4点目に至るシーン。

「あそこは(平戸)太貴が入れ替わって前に行ってくれたので、さすがに僕もついていかなきゃなと思って、最後の力を振り絞って、って感じです」

 冗談めかすのは照れなのかもしれないが、この言葉こそ、チームに連動性が染みついていることを証明している。

「練習からやってきていることが出ただけだと思うし、あれをやらないと僕が出てる意味がないので、そんな気持ちでやってます」

 曺貴裁監督は前夜のイングランド・プレミアリーグ第2節、マンチェスター・シティ対トットナム戦で、トットナムの2点目が同じように相手の短いゴールキックを奪って決めたことを例に出したが、松田も同じシーンに「刺激を受けた」と明かす。ミーティングでその映像を共有したことが、2つのゴールを生んだというわけだ。 

「やり続けることが大事だと思うし、このチームの誠実さが出た試合になったかなと思います」

 この勝利で鹿島アントラーズと勝ち点51で並び、得失点差で上回って再び首位に立った。残り11試合。優勝争いの中心にいる。

「僕も初めての経験ですし、いつもと違う気持ちではいますけど、プレッシャーはそんなに変わらないですね。やっぱりどんなときでもプレッシャーはあるから」

 松田はJ2時代の2021年に曺貴裁監督に請われて京都に移ってきた。あれから5年。常にこのチームの成長とともに歩んできた。

「チームがさらに強固になることがすごく大事だと思うし、そういうチームが一歩抜け出すことになると思います。僕たちは初めての経験ですけど、チームとしてやっていることに自信を持っているので、それを続けていけば結果につながってくると思っています」

 というわけで、松田と京都の選手たちは明日もまた、今日と同じように愚直に走り続けていくのである。


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