上写真=小泉佳穂が決めた先制点をはじめ、柏の攻撃は魅力たっぷりだったが…(写真◎J.LEAGUE)
■2025年6月21日 J1第21節(観衆:12,954人@三協F柏)
柏 3-3 京都
得点:(柏)小泉佳穂、垣田裕暉、原田亘
(京)米本拓司、長沢 駿、川﨑颯太
冷静に謙虚に
お見事、と思わず膝を打つような美しい攻撃で3ゴール。しかし、クロスを放り込まれて3失点。2位の柏レイソルが3位の京都サンガを迎えた6ポイントマッチは、3-3という派手めなドローに終わった。
柏のリカルド・ロドリゲス監督は、3度先行しながら3度とも追いつかれたとはいえ、ポジティブだった。
「今日のような形で、我々が目指す攻撃的なサッカーにおいてチャンスをたくさん作り、そして勝利にふさわしいと言える試合ができています。その方向でチームを成長させていきたい。失点を減らすことはもちろん重要ですが、同時に、我々はそれ以上に失点よりも多くのゴールを決める攻撃なサッカーを目指して、チームの成長を促していきます」
左サイドを小屋松知哉、三丸拡、渡井理己が絡んで完全に崩し、クロスに小泉佳穂が飛び込んでヘッドで決めた19分の先制点、サイドチェンジから右ワイドで久保藤次郎が受け、内側からポケットに入った原田亘を使い、センタリングがDFに当たって跳ねたところを垣田裕暉が軽やかなバイシクルシュートで決めた31分の2点目、右からショートコーナーと見せかけて相手が気を抜いたところで素早く小泉が中央に蹴って、原田が蹴り込んだ74分の3点目は言わずもがな。それ以外にも、それこそ長短・剛柔・上下・左右・前後・速攻遅攻など、あらゆるパターンを駆使して、繰り返し何度も京都を攻略する攻撃は七色の輝きだった。
「実際、今日は3得点しています。守備が堅い彼らからゴールを取ることがそもそも難しく、そのチームを相手に3得点しているという意味では、高い決定力があったとも取れます。決定的なチャンスをこれだけ多く作るのはとても難しく、にも関わらず、それを成し遂げることができました。チャンスを多く作れた試合は勝つ可能性はとても高くなると私はとらえています」
リカルド・ロドリゲス監督は攻撃に迷いがない。「背中でゴールを感じた」と粋な言葉でバイシクルシュートを振り返った垣田も同様だ。
「J1でも屈指のプレス強度があるチームだと思いますけど、その中でも相手にボールを全然奪われずに、逆サイドにボールを展開して、前半に決定機を何度も作れたのはチームとしてすごくよかったと思います」
そうなるとやはりこの日は、3失点がどう見たって課題だ。そこは、リカルド・ロドリゲス監督も「冷静に謙虚に」と見つめている。
「今シーズン、攻撃面だけではなく、守備面でもチームは試合を重ねるごとに成長を遂げています。我々は失点の少ないチームです。そういう意味でも堅い守備ができていると思います。もちろん、今日3失点したことには、やはり改善点があるという意味ですので、そこは冷静に謙虚にとらえて改善していきたいと思います」
守備を統率するのはキャプテンの古賀太陽である。3つの失点はすべてクロスから許したものだった。柏から見て左から放り込まれて米本拓司にヘッドで押し込まれると、その鏡合わせのように今度は逆サイドからのクロスに飛び込んだ長沢駿にダイビングヘッドを許し、さらには2点目と同じような形でクロスを入れられ、長沢のさらに奥から入ってきた川崎颯太に押し込まれている。
「しっかり人に合わせ続けようというところは声をかけ合ってはいましたけど、対応の甘さが出た。これでいいや、じゃないですけど、そういうものが少し出ちゃったのかなという気はします。結局、人がいるだけで何もできていないという状況が生まれたとは思うんですけど、もう戻ってるからいいやとか、スペースを埋めたからいいや、というところで終わっていると、今日のように失敗する」
アリバイディフェンスでは失点は防げない、という教訓がのしかかる。3失点すべてに共通するのは、古賀の頭を越された背中側で相手に飛び込まれているということだ。
「自分のところもそうですけど、人に合わせ続けながらも最後はしっかりボールにアタックすることは今シーズンからずっと言われ続けていますし」
自戒を込めて、最後の最後はボールにフォーカスする基本を再認識させられることになった。
とかく、ボールを運びながら相手を崩していくスタイルが時代遅れと揶揄されがちだが、それでもこの日の柏にはサッカーの面白さとロマンが詰まっていて、見るものの興奮を誘った。一方で、京都の研ぎ澄まされたリアリズムが生み出す緊張感が好勝負を呼び込んだ。
柏にとっては、ロマンとリアルの針をどこに落ち着かせるかを試された一戦になっただろう。その答えが見つかれば、さらにエキサイティングなチームになるだろう。
