上写真=渡邊凌磨が浦和のエース。トップ下で相手の脅威になっている(写真◎Getty Images)
トップ下で躍動
浦和レッズが東京ヴェルディを2-0で下し、9年ぶりとなる5連勝を飾った。立ち上がりからボールを支配し相手陣内に攻め入って、6分に松尾佑介が左からカットインして右足シュートを決め、31分には右のショートコーナーからのこぼれを渡邊凌磨がペナルティーエリア外から右足を振り抜いて決めた。後半ややペースを落とした時間帯もあったが無失点のまま切り抜け、快勝と言ってよかった。
好調の要因はいくつもあるが、大きかったのは連勝のスタートとなった第10節のFC町田ゼルビア戦から中盤の構成を変えたこと。ボランチに安居海渡とサミュエル・グスタフソンが並び、渡邊がトップ下に上がった。
ここまでは渡邊がボランチで松本泰志がトップ下という布陣が基本だった。これはキャンプから積み上げてきた形でもあったが、渡邊が第2節の京都サンガF.C.戦で負傷し、しばらく戦列を離れたこともあってもう一つかみ合っていなかった。このため第9節でアビスパ福岡に0-1で敗れた後、町田戦での変更となった。
同時にチアゴ・サンタナが体調を崩したこともあり、1トップには松尾佑介が起用された。この布陣は見事にはまり、守備の堅い町田から2ゴールを奪っての勝利。2点目となったGK西川周作からのロングフィードを渡邊がセンターサークル内でフリックし、松尾が抜け出して決めたゴールは新システムの強みを表していた。
ここから京都に2-1、横浜F・マリノスに3-1、サンフレッチェ広島に1-0と連勝した。
この4試合ではスタメンの11人がまったく変わらなかったが、東京V戦はサミュエル・グスタフソンのコンディションが整わず松本が起用された。ただ、これまでのように渡邊がボランチに下がるのではなくトップ下のままで、松本が安居と並んでボランチを担った。つまり、4試合と同じ布陣でグスタフソンと松本が入れ替わっただけの布陣だった。
この5連勝の間、渡邊も松尾も3ゴールずつを挙げて攻撃の重要な役割を果たした。中でも渡邊は持ち前の運動量で攻守に躍動し、かつ確実なボールキープ、視野の広さを生かしたスルーパスで多くのチャンスを演出するなど八面六臂の活躍だった。
とりわけ存在感を高めているのがシュートのうまさだ。もともと右足のキックの精度には定評があったが、最近では左足のキックでも確実に狙いをとらえている。コントロールしたボールはもちろん、ダイレクトであろうが、浮き球であろうが確実にゴールの枠をとらえるシュートの正確性はリーグでも屈指だろう。どこのチームでも決定力不足が嘆かれることが多いが、これほど確実にシュートを打てる選手は貴重。シュートの際の決断力、躊躇のなさも際立っている。
昨季はリーグ戦の全38試合に出場して(しかもすべて先発で、途中交代は7試合だけ)存在感を示し、今季もマチェイ・スコルジャ監督が渡邊を中心としたチーム作りを手がけてきたように、いまや完全にレッズのエースに成長したと言っていい。プレーには余裕が感じられ、佇まいにも風格さえ漂わせている。プレーヤーとしての格を一段上げた感がある。
今季の浦和には両サイドに金子拓郎、マテウス・サヴィオという能力の高い選手が加わりながら、なかなか本来の力を発揮するに至らなかったが、この連勝の期間には見事なパフォーマンスを見せるようになっている。
現在、渡邊を中心とした浦和の攻撃陣はJ1でも有数の破壊力と、見る者を魅了する連動性も兼ね備えている。このままさらに連係が高まり、個人の力が発揮されるようになれば、悲願ともいえる2度目のJ1優勝も夢ではなく、6月に控えるクラブワールドカップでも日本の代表として好成績を挙げる期待を持たせる。
そして、渡邊には日本代表の森保一監督の目も注がれているだろう。
文◎国吉好弘