上写真=FC東京戦で先発したFW垣田裕暉(写真◎J.LEAGUE)
10試合で11ゴール、J1の順位は5位

FC東京戦で同点ゴールを決めた木下康介(写真◎J.LEAGUE)
柏は90分を通してほぼボールを保持し、優勢に試合を進めた。しかし、FC東京のゴールをこじ開けたのは後半のアディショナルタイムに突入してから。やっと1点を奪って辛うじて勝ち点1を確保した。もちろん、もう少しで敗戦という試合を引き分けに持ち込んだのだから価値のあるゴールであることは間違いない。
ただあれだけボールを握っておきながら、ゴールに結びつかないのは今季の柏が抱える最大の問題点だろう。
すでに多く語られているように、リカルド・ロドリゲス監督を迎えた柏は昨季までとは大きく異なり、自分たちでボールを保持して、試合の流れを支配するサッカーを目指し、それが実現できている。ここまで4勝5分け1敗で5位という成績にも表れている。しかし、10試合を戦って得点は11、展開されているプレーを反映しているとは言い難い。
決定力不足という言葉で片付けてしまえば、まさにそのとおりだが、FC東京戦ではその手前、決定機を作り出す回数も少なかった。ロドリゲス監督は試合後「ボールを支配しながら、決定機につなげるアイディア、ゴールに向かう強い意志を欠いた」と語り、その修正策として「ハーフタイムにもっとトップとシャドーの距離感を近づけ、相手の守備をずらす動きを増やそう」と話したという。しかし、なかなか改善されるには至らず、最後の同点ゴールも交代選手を次々に投入して、セットプレーを起点に半分力技でねじ込んだゴールだった。

今季はまだ1得点。FW細谷真大の得点力に対する期待は大きい(写真◎J.LEAGUE)
決定力を高めるというのはサッカーにおいて世界中のチームが抱える問題であり、ほとんどの監督が日々頭を悩ませている。簡単な解決策など、あるはずもないが、柏には垣田裕暉、木下康介、細谷真大とJ1でもトップクラスのストライカーが3人もいる。ここまで基本的に垣田が1トップでプレーし、献身的な動きやポストプレーでロドリゲス監督の戦術のキーマンとして働いている。木下もFC東京戦で同点弾を決めたように、交代出場でも結果を残している。
木下のパフォーマンスが際立っていた時期には、垣田との2トップで臨んだこともあった。細谷は言うまでもなく日本代表にも選ばれる高い能力を備えており、2トップの採用を含め、その組み合わせを考えることも一つの手かもしれない。いずれにせよ、彼らをいかに効果的に起用するかが監督の采配が一つのカギになる。
ストライカー以外では2列目、特にロドリゲス監督から絶対の信頼を受けている小泉佳穂のプレーもチーム全体の得点力アップさせる重要な要素だろう。小泉は今季浦和レッズから移籍して、ロドリゲス監督が浦和で指揮を執った時期に見せていた輝きを取り戻し、文字通りチームの核となっている。しかし、物足りなさが残るのが得点への関与だ。前節のガンバ大阪大戦で鮮やかなゴールを決めて、これが決勝点となってチームを勝利に導いた。本人も「シュートを意識して取り組んでいるので。勝ちにつながってうれしい」と話し、練習の成果と勝利への貢献を喜んでいた。
そのG大阪戦では第2節の川崎F戦に続き2点目を挙げたのだが、勝利へ導いたゴールをきっかけにさらに得点を増やすことができればチームにとっても、本人にとっても大きい。しかし、この日はチーム最多の3本のシュートを放つなど何度か迎えたチャンスをものにできなかった。残念なのはチャンスに積極的な姿勢を欠いたシーンも散見されたことだ。
56分にカウンターから絶好のチャンスが生まれ、山田雄士のパスから垣田が流したところへ小泉が走り込んだにもかかわらず、シュートを選択せずに持ち直して戻し、結局チャンスをつぶしてしまった。もちろん、体勢や角度の難しさから判断したのだろうが、可能性は低くても強引にシュートを選択した方がゴールに近づいたのではないか。少なくともロドリゲス監督が求めた「ゴールに向かう強い意志」は感じられなかった。
浦和時代にも決定機に決められず、そこから自身の調子も崩していった印象がある。左右両足で正確なキックが蹴れる特異な才能を持つだけに、本来シュートがうまくないはずがない。レベルが違うとはいえFC琉球時代にはシーズン6ゴールを挙げてJ1クラブへのキャリアアップのきっかけとした。自信を持って積極的にゴールを狙う姿勢を示すことこそ、チームにも良い影響をもたらし、自身の成長にもつながるはずだ。
文◎国吉好弘
【動画】J1第10節◎FC東京対柏ハイライト
【FC東京×柏レイソル|ハイライト】2025明治安田J1リーグ第10節|2025シーズン|Jリーグ
www.youtube.com