3月8日に行われた明治安田J1リーグ第5節で、湘南ベルマーレはFC東京とのアウェーゲームに臨んだ。0-0という結果に終わったが、勝ち点1は手に入れた。無敗で2位を堅持した好調のチームにあって、GK上福元直人の安定感がチームに勢いをもたらしている。

上写真=ゴールを守りきった上福元直人。好調の礎になっている(写真◎J.LEAGUE)

■2025年3月8日 J1第5節(観衆19,654人/@味スタ)
FC東京 0-0 湘南

粘り強さと執着心

 勝てなかった。でも、負けなかった。湘南ベルマーレの山口智監督がFC東京とのスコアレスドローを振り返って「ゼロに抑えるという考え方ではよかった」と表現した。

 毎年、最後に降格がちらつく戦いを強いられてきたチームが、今季は好調なスタートを切っている。4節までに3勝1分けの2位だ。鈴木章斗、福田翔生という若き2トップが躍動すると、ダイナミックな攻撃で鹿島アントラーズ、セレッソ大阪、浦和レッズを立て続けに倒し、横浜F・マリノスとは引き分けて、さあ、FC東京戦。

 しかしこの日は、なかなか有効な攻撃が繰り出せずに0-0で終わった。山口監督は「スペースを見つけられずに苦労した」と総括した。その理由を聞くと、「自分たちの準備が遅くてプレーテンポが遅れた。共有できていなかったわけではなくて、整理をする中で足りなくて、自分たちのアクションのところで課題が残るゲームだった」という答え。相手に抑え込まれたというよりは、自分たちの問題であるという認識を示した。

  何度もチャンスを許す中でも無失点に抑えたのは、守備の集中力を切らさなかったから。その象徴的な存在はGK上福元直人だろう。なんといっても、26分のビッグセーブはこの日のハイライトになった。

 攻めに出たところでボールを失って左サイドから押し込まれ、仲川輝人からファーに柔らかいロブでクロスが飛んできた。そこには山下敬大がいてヘディングシュートを打たれたのだが、すんでのところで上福元が左手でかき出した。

「ニアに立った状態からファーに、自分の背中を越すように上げられたボールだったので、後ろの状況は確実に理解はできていなかったんです。ステップを運びながらボールの軌道や相手の状況を見たときに、最後にディフェンダーがぎりぎりまで競り合ってくれたことによって、コースが限定されました。そこは(鈴木)雄斗のファインプレーで、もちろん一番いいのは触らせないことかもしれないですけど、ああやって最後の粘り強さとか執着心が出てくることによって、自分の守りやすさにつながったと思います」

 自分の反応の良さだけで防いだわけではない、ということを強調している。このことが湘南の好調を示すキーワードにもつながる。

「やっぱり勝ちたかったのはまず本音ですけど、ただ、去年と比べて、押し込まれてもゴール前で粘り強く守る部分は、キャンプから取り組んできたテーマ。そこがしっかりとできることで、こういう難しい試合でも最後に相手の前に入り込んでいけるような可能性を見出せるので、その状況を後ろから作り出すことがこの長いリーグで大事なことだと思います」

 粘り強さとか執着心といった言葉は、言ってしまえば気持ちの問題だが、逆にそこが整えば上位で戦える、という手応えは昨季のうちにつかんでいたという。上福元は昨年7月に加入して8月の終わりにポジションを手にしてからは、4連勝を含む5勝1分け5敗と五分の星でしっかり勝ち点を積み上げて残留にこぎつけた。

 その勢いが、シーズンをまたいでより増している。上福元が最後尾からもたらす安定感が前線の迫力を生んでいて、それが湘南のスタートダッシュの礎だ。

「まだ始まったばかり。タフな試合を勝ち取るチャンスを手繰り寄せられると思っているので、そういう試合を多くやっていきたいと思います」

 次節はホームに王者のヴィッセル神戸を迎える。負けなしを続けてきた湘南の今後を占う試金石になりそうだ。


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