上写真＝土壇場で同点ゴールを決めた武藤嘉紀（写真◎小山真司）
■2024年11月30日 明治安田J1第37節（＠三協F柏）
柏 １−１ 神戸
得点：（柏）木下康介
（神）武藤嘉紀
一度はオフサイドの判定も…
口火を切ったのは勝てばJ1残留が決まるホームの柏だった。開始早々の５分。１９０センチの長身ＦＷ木下康介が自ら獲得した右ＣＫからネットを揺らす。手塚康平が蹴ったアウトスイングのボールを打点の高いヘッドで叩きつけ、ゴールに突き刺した。
２位広島に勝ち点３差で首位に立つ神戸は、いきなり面食らった格好になったが、その後もしばらくアグレッシブな相手の攻撃を受ける場面が目立った。何度もサイドを突破され、クロスを許す。『シンプルイズベスト』な攻めは神戸も得意とするところだが、開始30分までは『奪ったら前へ』を徹底し、幅を使って攻めきる柏の勢いがまさった。
神戸もレンジの長いパスを多用して攻め筋を探るが、柏も出し手にプレッシャーをかけ続け、簡単には通させない。神戸のビルドアップの局面で、両サイドバックの酒井高徳、初瀬亮にボールが出ると、柏は左サイドハーフのマテウス・サヴィオ、右の山田雄士がそれぞれ前に出てしっかりプレスをかけ、フィードの精度を低下させた。
最初の45分は柏が狙い通りの戦いをやり切ったと言っていい。前半終了間際に神戸はカウンターから武藤嘉紀が右サイドを突破し、ゴール正面で待っていた大迫勇也につないでボレーを狙ったが、シュートの持ち込むことができず。１−０のまま前半は終了した。
迎えた後半、神戸は左サイドの構成を変更する。井出遥也に代えて佐々木大樹を投入し、３トップの左に配置。左ウイングだった宮代大聖が左インサイドハーフに移動した。さらに左サイドバックの初瀬に代えて本多勇喜も入れた。
だが、１点を追う神戸はゴールが遠く、なかなかいい形を作れない。対して柏は59分に木下、70分に途中出場の小屋松知哉が決定機を迎えたが、こちらもシュートが枠をとらえず、追加点はならず。次の１点を巡る攻防は試合時間が残り15分を切ってもますますヒートアップしていった。
スコアを動かしたい神戸は71分に井手口陽介に代えて山口蛍、宮代に代えて汰木康也を投入。２枚替えでさらなる攻撃の活性化を図った。
85分にはその汰木からのパスをボックス内で受けた大迫が反転シュート。決定機だったが、GK松本健太が左手一本でストップ。神戸は終盤、何度も相手ゴールに迫ったが、柏も集中した守りで得点を許さなかった。
このまま試合終了かと思われたが、13分間のアディショナルタイムにドラマが待っていた。試合序盤から競り合いの中で肘を使い、前半に1枚イエローカードをもらっていた柏のDFジエゴがボックス内で武藤と競り合い、ファウルを犯す。２枚目のイエローカードを受けて退場。神戸がPKを獲得した。
しかし、である。決めれば同点となる重要なPKを、エース大迫がまさかの失敗。終盤、猛攻を見せていた神戸も万事休す…と思われたが、さらなるエンディングが用意されていた。90＋10分、右CKの流れから武藤がボールをゴールに蹴り込んだ。一度はオフサイドと判定されたものの、VARを経てゴールが認められ、土壇場で神戸が追いついた。
劇的なドローで、神戸は明日（12日）行われる広島対札幌で広島が勝っても、勝ち点１差の首位をキープしたまま、湘南との最終節を迎えることになった。苦しみながらもリーグ連覇、そして国内二冠へと前進した。
一方、首位チームをぎりぎりまで追い詰めたものの、またも最後最後に失点し、柏は残留を決められず。来季もJ1で戦うために、最終節の札幌戦で勝利を目指すことになった。
取材◎佐藤景
▼出場メンバー
・柏◎GK松本健太、DF関根大輝、立田悠悟、古賀太陽、ジエゴ、MF山田雄士（84分:熊坂光希）、白井永地、手塚康平、マテウス・サヴィオ（90＋4分:三丸拡）、FW木下康介（84分:フロート）、細谷真大（67分:小屋松知哉）
・神戸◎GK前川黛也、DF酒井高徳、山川哲史（78分:広瀬陸斗）、マテウス・トゥーレル、初瀬亮（46分:本多勇喜）、MF井手口陽介（71分:山口蛍）、扇原貴宏、井出遥也（46分:佐々木大樹）、FW武藤嘉紀、大迫勇也、宮代大聖（71分:汰木康也）
