上写真=早坂勇希が悔しいデビュー戦から感じたこととは(写真◎J.LEAGUE)
■2024年8月17日 J1リーグ第27節(@U等々力/観衆22,850人)
川崎F 1-3 横浜FM
得点:(川)エリソン
(横)アンデルソン・ロペス、西村拓真、畠中槙之輔
「一番難しいこと」はクリア
失点しても、下を向くことはしなかった。できなかった。それは、ゴールキーパーとして早坂勇希のやり方ではなかったからだ。
「僕が下を向いた時点でチームが終わりだと思うので、常に前を向かなきゃいけない。それに、みんなが僕のミスを全力でカバーしてくれましたから」
これが早坂のデビューだった。アカデミー時代を過ごした川崎フロンターレに2022年にプロとして帰ってきて、再びその一員となった。しかし、チョン・ソンリョンをはじめとする先輩GKたちの壁は高く、厚かった。そのチョン・ソンリョンがこの日、コンディション不良でピッチに立てず、早坂が先発メンバーに名を連ねた。
キックオフから持ち前の声で味方を動かし、クロスやシュートにも落ち着いて対応して、前半は危なげなく守った。しかし、58分にアンデルソン・ロペスにPKを決められ、60分に西村拓真にスーパーミドルシュートをたたき込まれ、79分には相手のCKの流れから畠中槙之輔にヘッドで流し込まれた。どれも早坂一人で防ぎ切れるものではなかったし、89分にはエリソンが1点を返したものの、勝てなかった。
鬼木達監督からは「今日は早坂のデビュー戦だから、しっかり勝とう!」の号令がメンバーに伝えられたという。その言葉は「やっぱりうれしかったです」と心に響いた。だからこそ3失点は「キーパーとして責任を感じますし、自分がキックで流れを変えてしまった部分もあった」と悔やんでも悔やみきれない。
それでも、自分が何者であるかを示すことはできただろう。PKは橘田健人が西村拓真を倒して与えたものなのだが、決められてプロ初失点で悔しいだろうに、すぐさま橘田に駆け寄って背中を押して、鼓舞した。「常に前を向く」という姿勢を行動で示し続けた。
「試合が終わってみんなが、早坂、ごめんな、って声をかけてくれたんですけど、本当に申し訳ないというか、自分の力のなさで勝てなかったのもあるので…。自分の力をもっともっと高めていかなきゃいけないと再確認しました」
苦々しい90分だったが、これは始まりだ。
「ここからがスタートというか、キーパーにとっては0から1というのが一番難しいところだと言われているので、ここからどんどんいろんな経験をして、しっかりとゴールマウスを守っていきたいと思います」
ただ、最初の一歩を踏み出しても、やることは変わらない。
「日頃、常にいい準備をしているのはキーパーとして当たり前のことですし、いつどんなスクランブルが起きても対応できるようにしていきます」
0を1にできたのも、いつもと変わらないいい準備があったから。1を2にするのも、もっと増やすのも、そのやり方は変わらない。