川崎フロンターレに待望のニューエースが誕生だ。FW山田新がその人。8月11日の明治安田J1リーグ第26節でFC東京から2点を奪って、3試合連続2ゴールの快進撃だ。その魅力は、努力と準備と研究と、そして負けん気の強さである。

上写真=三浦颯太(左)、脇坂泰斗(中)に祝福される山田新。ニューヒーローはどこまで突き進むのか(写真◎J.LEAGUE)

■2024年8月11日 J1リーグ第26節(@味スタ/観衆37,452人)
FC東京 0-3 川崎フロンターレ
得点:(川)山田新2、高井幸大

「努力が報われるのはうれしい」と鬼木監督

 いま私たちは、川崎フロンターレの新しいエースの誕生を目撃している。3試合連続2得点というゴールラッシュ、その3試合すべてで勝利に導いている山田新である。まごうことなきニューヒーローだ。

 FC東京からあっという間に奪った2つのゴールは、どちらもテクニカルなヘディングシュートによるものだった。

 キックオフから押し込まれて難しい立ち上がり。だから、15分の先制ゴールはチームの初シュートだった。左からのマルシーニョのクロスが少しだけ後ろに飛んできたにもかかわらず、バックステップを踏みながらジャンプして、パワーをボールに乗せてゴール右にねじ込んでみせた。

 わずか5分後の一撃は、右からのファンウェルメスケルケン際の鋭いクロスに合わせたもの。FC東京の長身センターバック、185センチの土肥幹太、186センチの岡哲平の間でどちらにも寄せられない場所に潜り込んで、175センチの山田が高いジャンプから叩きつけるようにゴール左へと送り込んだ。

「いい準備ができていましたし、最近トレーニングしていて、うまく合わせることができました」が1点目の振り返り、続く2点目は「身長差はありますけど、その間に立つことができていました」という自己分析。この言葉でよく分かるように、ゴールは感覚というよりは精密な準備で奪い取っている。

 ここで問題。大迫勇也(神戸)、レオ・セアラ(C大阪)、アンデルソン・ロペス(横浜FM)、大橋祐紀(前広島)、ピエロス・ソティリウ(広島)に共通するものは?

 答えは、すべて山田の滋養になっていること。

「彼らのプレーを映像で見て学びました」と明かすように、彼らのアクションの数々を仔細に分析した結果が、この24歳のストライカーのゴールに対するイメージを広げてふくらませ、実行に移させているのだ。

「彼らの体の動き、インパクトの仕方、重心をどう持っていくのか、それを踏まえた上でトレーニングしていました」

 相手をなぎ倒すような体の強さが売りだからパワー系ストライカーに見られがちだが、下支えしているのは研究熱心なフットボールへの向き合い方。準備がゴールを生んだというのは、そういうことだ。

「努力が報われるのは、監督としてもうれしい」とは鬼木達監督の称賛の言葉だ。居残り練習でヘディングシュートを積み重ねてきた姿が焼きついているという。「最終的に点を取れるところにいる回数が増えてきている」と具体的な進化のポイントを明かした。

 川崎Fの黄金時代の一つ、2020年や21年にはレアンドロ・ダミアンという別格のストライカーがいた。そんな絶対的な彼でも、3試合連続複数得点は成し遂げていない。もちろん、往年のレアンドロ・ダミアンといまの山田を単純に比較することなどできないが、それでもここまで苦しんできた川崎Fにとっては待望の点取り屋の覚醒になるかもしれない。

「自分が点を取ることで、みんなが自分のことを見てくれるように自然になっている」と山田は実感をかみ締める。「チームとして自分をゴール前に専念させてくれていますし、自分が決めることでチームも乗ると思うので、自分が決めてやるという思いは強くなってきています」と、自覚があふれ出ている。

「まだまだ技術的なところは伸ばさなければいけないけれど、それ以上に気持ちの部分でチームを引っ張ってくれています。それは続けていってほしい」

 そう目を細める鬼木監督の信頼は手に入れた。

「いろんな選手から学んで競争するのが楽しい。スーパーな選手はいるけれど、実力で負けているとは思っていません」

 努力と研究と準備の人は、そんな心の強さも大きな魅力である。


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