上写真=FC東京の選手が喜ぶ中、小野裕二が藤原奏哉と敗戦を噛みしめる(写真◎J.LEAGUE)
■2024年7月13日 J1リーグ第23節(@国立/観衆57,885人)
FC東京 2-0 新潟
得点:(F)遠藤渓太、野澤零温
「強度」と「スキ」
13分、6分、6分。
J1第22節でサガン鳥栖に、天皇杯3回戦でV・ファーレン長崎に、そしてJ1第23節でFC東京に公式戦3連敗。そこで決められた最初の失点はいずれも、早い時間に食らっている。悪い癖が治らない。
「ノーガードでやられてしまったというところで、もっと強度の高い準備ができないとダメだなと」
FC東京戦では、新潟の右サイドに展開され、仲川輝人がオフサイドポジションにいたために一瞬が足が止まったスキに、仲川はボールに関与せず、オンサイドでその外側にいた遠藤渓太にドリブルで切り込まれ、対峙した遠藤凌の伸ばした足の外側を通ったシュートを逆サイドにねじ込まれた。
松橋力蔵監督が使った「強度」という言葉が、不調の新潟のキーワードだ。
「そこからは内容も自分たちのペースをつかみかけていたんですけど、攻撃がパワー不足というか、自分たちの色が少し出てるように見えながら、そのアイディアというよりは強度が足りないから、相手に対して脅威にはならない」
松橋監督はもう一つ大切なフレーズを口にした。「スキ」である。ただ、こちらが作るものではなくて、相手が見せる「スキ」のことだ。
終了間際に右サイド深くでスローインを得た。近くにいた高木善朗がすぐに相手の裏に投げようとしたが、松田詠太郎は走り出さずに素早いリスタートができなかった。高木がなんで走らないんだ、というアクションを見せた。
「そこは(精神的な)強度という言葉でも表現できると思いますけど、やはり僕はスキだと思います。そのスキを本当に突けるか突けないか。スキが見えた瞬間にアクションというものは引き出されると思いますし、見えていないからそのアクションが起きない」
相手が見せたスキに気づけるかどうか、という意識の差のことである。松橋監督にとってそれは、前半から気になるポイントだったという。
「前半から、出し手と受け手のタイミングが合ってないところがすごく多かった。失われないような状態でも失ってしまって、自分たちで攻撃を止めてしまう。それはなぜ起きるか。受ける意志がないからです。ボールを持っている選手が最終的にジャッジするわけですが、受け手は常に受ける準備をするのが大事だと思いますし、受けるためのアクションと同時に、やっぱり選ばれなかったときのことも考えていなければならない」
試合後すぐに行った「緊急ミーティング」で、こうしたことを改めて選手の脳裏に焼き付けたのだという。
キャプテンの堀米悠斗にもその理由を聞くと、明快な答えが返ってきた。
「やっぱり私生活を含めて、どれだけ周りを見て考えて生きているかどうかだと思うんです。 僕自身は小さいときから私生活での気づきみたいなことについて、すごくアラートにやってきている。練習の何げないシーンでもそう。そういうことはすべて、僕はつながっているような気がして。ただボールを動かしているのではなくて、相手が作ってくれたスキを早く突いていかないと」
相手のスキを見つけ出すセンサーを常に働かせていなければ、新潟が誇る技術を発揮することはできない。フットボールにおいて「相手を見る」とはそういうことで、順序が逆になってはいけない。
小野裕二もミーティングで仲間に訴えかけたという。
「100パーセントを出していないわけではない。でも、100パーセントでも勝てないんだということはしっかりと受け入れて、それ以上やれるような力を一人ひとりがつけないといけないですし、そこの問題から逃げずにみんなでチャレンジしてこうという話はしました」
その言葉のとおりに、選手たちに逃げるつもりはない。