上写真=町田戦ではセットプレーでチャンスも。アジアの舞台でも高さは貴重な武器になる(写真◎J.LEAGUE)
「もう少し強気に」
FC町田ゼルビアに0-1で敗戦。悔しいから口数は少ないけれど、川崎フロンターレが誇る新時代のセンターバック・高井幸大にとっては、学びに満ちていた。
「相手の思ったようにやられました。ラインはもう少し強気に設定できればよかった」
町田の自慢の強度の高さと素早い攻撃に対応しようとするがあまりに、低い場所で構えることになった。町田は長身のオ・セフンと快足の藤尾翔太で組んだ2トップのコンビネーションが良く、両サイドも平河悠と藤本一輝が迷いなく突破を仕掛けてくる。その4人に4バックが押し込まれた格好だ。
32分には右サイドを破られて失点している。ボランチの脇のスペースから仙頭啓矢が送ったラインブレイクの縦パスと、走り込んだ藤本のニアへのセンタリングは、どちらもワンタッチ。速さと正確性で崩された。センタリングに対して高井はスライディングして先に触ろうと足を伸ばしたものの、無情にもその先を抜けて、背中側から走り込んでいた藤尾に押し込まれた。
「あの場面になる前の対応でもう少し改善が必要かなと。 ボールホルダーがフリーのときも、ラインのダウンのところだったり、簡単に前を向かれすぎというか、もう少しボランチのところで閉められればよかった」
町田は平河が明かしたように川崎Fの右サイドが弱点だと狙っていて、リーグ戦で初出場初先発のボランチ、ゼ・ヒカルドの横にできたスペースと、本職ではない右サイドバックに入った瀬川祐輔の裏を執拗に崩しにきた。その駆け引きに敗れた。
この失点、そしてこの敗戦によって改めて高井に見えたことは多い。例えば、攻撃のテンポ。
「後半はラインの高さは常に意識しましたし、つなぐところはもう少し自信を持ってやろうと」
「今日はすごく遅攻が多かったので、もう少し速攻というか、 相手の1点目のような速いサッカーもしなければ」
ラインを下げさせられ、つなぎたくても蹴ってしまい、あるいは無用につないでスピードを殺してしまう。それは「川崎フロンターレ」ではないということだ。
このことを強く心に刻んだ上で、パリ・オリンピックの予選に臨む。U-23日本代表の一員としてカタールで戦う、U-23アジアカップへ。
「強い覚悟を持ってやれればいいかなと思います。まずはコミュニケーションを取るところ、試合中の修正がどれだけできるかですね」
町田戦の苦いレッスンは、アジアの戦いで糧として生かさなければならない。