上写真=町田とアウェーで対戦した鹿島。序盤から厳しいプレスを受けることになった(写真◎J.LEAGUE)
選手層の問題をどう補っていくか
開幕戦で名古屋グランパスを3―0と下し、最高のスタートを切った鹿島アントラーズだが、第2節ではセレッソ大阪と1-1で引き分け。9日に行われた第3節では、アウェーとはいえJ2からの昇格組である町田ゼルビアに0―1で敗れて、1勝1分け1敗と五分の星となった。
町田戦では13分に左サイドの平河悠をフリーにして先制ゴールを許し、この1点を最後まで返すことができなかった。奇しくも2022年まで3シーズンこの町田で指揮を執った鹿島のランコ・ボボヴィッチ監督は「入りのところで、ロングボールを蹴らされて、相手のサッカーにつき合ってしまった」と立ち上がりから相手にペースを握られたことを悔やみ、「町田のように意思統一されているチームに先制点を奪われると難しい試合になる。われわれが目指している、しっかりと後ろからボールを動かして、相手を揺さぶりながら進めるという、パスをつなぐサッカーができなかった」と振り返った。
その要因として「いつも出ている選手が出られなかったことがもちろん関係します。初出場の選手がこのスタジアムの雰囲気や、リーグ戦の雰囲気に流されずにプレーできればそれに越したことはないのですが、そこに関しては選手が替わったから、という理由も1つ挙げられると思います」と直前にDF関川郁万、開幕からボランチを務めていた知念慶がコンディション不良で出場できなかったことを挙げた。J1初登場となった津久井佳祐や初スタメンのギリェルメ・パレジのプレーが良くなかったというより、不安材料があることでチーム全体が消極的な入りをしてしまったということだろう。
そもそも今季の鹿島はセンターバックが本職の選手が津久井を含めて3人しかいない(他に植田直通、関川郁万)。昨季まで鹿島でプレーしていた昌子源は移籍し、この日は町田のベンチに座っていた。セルビアリーグのバチュカ・トポラから長身CBのチャルシッチを獲得するはずだったが、メディカルチェックの段階で問題が生じ、獲得には至らず。ただ当てが外れた面があったにせよ、結局、そのままシーズンを迎えることになってしまった。また、ボランチについても柴崎岳が負傷したキャンプの段階で本来FWの知念をコンバートせざるを得ない状況があり、チーム編成の段階から問題があったと言わざるを得ない。
そんな状況で臨んだ試合で、町田の素早く連動性のあるプレスに苦しんだ。失点も中盤で佐野海舟がボールを奪われたことが発端で、日本代表にも選ばれた佐野をもってしても、その餌食となった。佐野も町田でプロデビューして2シーズン前までプレーしており、気後れしたというわけではないだろうが、さまざまな面で後手に回ったことは否めない。町田のプレスの厳しさはすでに知られているところで、当然警戒していたにも関わらず苦しんだ。この点はチームとして大きな反省材料だろう。
さらに問題と言えるのは無得点に終わったことではないか。この日の鹿島は 決定機と呼べるほどのチャンスを作り出すことができなかった。2トップを組んだ鈴木優磨とチャヴリッチの連係はチグハグで、サイドからの崩しも効果的なものはほとんどなかった。入りが悪かったとしても、少なくともハーフタイムに修正して後半には立て直すことができるのがこれまでの鹿島のイメージだった。だが、それはかなわなかった。
せっかくの好スタート(名古屋戦も点差ほど内容も良かったというわけではなかったが)も一気にしぼんだ感さえある。この日の敗戦を重く受け止めなければ、苦しいシーズンになりかねない。
取材◎国吉好弘