上写真＝太田修介が歓喜のダッシュ！ ゴールを決めるとまっすぐにサポーターの元へ（写真◎J.LEAGUE）
■2023年9月29日 明治安田生命J1リーグ第29節（@等々力/観衆17,557人）
川崎F 2-3 新潟
得点：（川）ジョアン・シミッチ、山田新
（新）鈴木孝司、新井直人、太田修介
「もう入ったなと」
太田修介が投入されたとき、松橋力蔵監督からミッションを与えられていた。
「守る時間が長くなるかもしれないが、ひと刺ししてくれ」
ピッチに飛び出していったのは73分のこと。2-1でリードする局面だ。試合終了までのおよそ20分、その1点のリードを守りつつも、自慢の俊足で一撃を食らわす役割だった。ところが、76分に失点。
「追いつかれてしまったので、自分が決めてやるという気持ちは強かったです」
太田の決意はさらに固くなった。そして80分、そのときがやってくる。
渡邊泰基が最終ラインから前線に縦パス、長倉幹樹が落として星雄次が左へ展開した。2本連続のワンタッチパスで、オープンスペースをまんまと突く。
「泰基が相手の逆を突く縦パスをつけたところから、もう完全に相手のベクトルも折れていましたし、 幹樹がしっかりスクリーンしてくれたので、相手がスライドしたところにギャップができて、僕がフリーになれました」
受けた太田に迷いなどなかった。
「もうゴールまでの道は見えていて、先にスペースを取って、そこから切り返そうと思っていたので、イメージ通りにシュートを打つところまではいけました。マイナス気味に切り替えしたことで、 相手のカバーも来れないと思っていて、そこもイメージ通り。 シュートはゴールを見る感覚で打ちました。打ったあとは、もう入ったなと」
思念が現実を産み落とす。これこそ、理想のゴールである。
右足を振り抜いたあとは体が右に倒れて、そのままくるっと一回転して立ち上がった。バランスなどお構いなしになるほど、右足にパワーを注いだことになる。
「体勢が難しいほうが入るっていう感覚があるんです。キーパーもたぶん予測できない」
型崩れの妙とでも言おうか。「そこは身体能力ですね」と胸を張るこの男だからこその特性なのだ。そこまで含めて、イメージ通りなのかもしれない。
ゴールが決まると、まっすぐに目の前のゴール裏に向かって走り、味方も手招きした。およそ2000人が集結したと言われるサポーターの元へ。
「すごい数のサポーターが来ていましたし、いままで点を取った試合ではサポーターのほうに行けなかったので、取ったらやりたいなとずっと思ってたんですよ」
苦しい時期を過ごしたから、そんな念願は甘い香りがした。8月の名古屋グランパス戦で負傷し、長いリハビリを強いられてきた。前節でようやく復帰できたばかりだった。
「ケガで苦しい時間を過ごしたので、自分を認めてあげたいと思っていました。結果を残したいと思ったので、自分で振り抜きました」
それがリハビリに携わってくれたスタッフや、励ましてくれた人たちへの心からのお礼だ。
移籍1年目、初のJ1でしっかり結果を残している。これで5ゴール目。現在のチームでトップになった。
「でも」と、太田は言い切る。
「涼太郎が7点取ってるんで、まだまだ足りないかな。そこは超えたい」
シーズン半ばでベルギーに渡った伊藤涼太郎を上回る決意を堂々と明かす。残りは5試合。名実ともにトップスコアラーになることは、十分可能だ。
