今でこそ高校卒業と同時に海を渡る選手は珍しくないが、今から13年前にプレミアリーグの名門アーセナルの門を叩いた選手がいた。横浜F・マリノスに所属する宮市亮だ。2021年まで欧州で過ごし、その間にはイングランドやドイツ、オランダなどのリーグでプレー。数々の熱いダービーを目の当たりにしてきた。7月15日(土:19時/@日産スタジアム)に川崎フロンターレとの『BIG神奈川ダービー』を控える宮市ならではのダービー観や、大一番への思いを聞いた。

宮市が考える『BIG神奈川ダービー』

画像: 6月10日の第17節・柏戦では逆転決勝ゴールを奪うなど、大ケガからの完全復活を印象付けた宮市(写真◎J.LEAGUE)

6月10日の第17節・柏戦では逆転決勝ゴールを奪うなど、大ケガからの完全復活を印象付けた宮市(写真◎J.LEAGUE)

 今年、Jリーグは創設30周年を迎えたが、欧州と比べてまだ歴史の浅い日本で、地域を巻き込んだダービーを根付かせるにはどうすればいいのか。宮市は欧州の例にとらわれず、日本らしさを出すことがポイントだという。

「欧州ではダービーのチケットを手に入れるのが本当に難しい。余っている席なんてありません。まずそういうところからも根付き方が違うし、そこを比べてしまうと、日本と歴史の積み重ねの差は感じます。でも日本もこの30年で、すごく成長しました。だからこそ、日本独自の道というか、いろいろなエンターテインメントの要素を取り入れることが大切だと思います。日本はエンタメの地位も高いですし、関心の高さも感じます。エンタメと試合の勝負を融合していくJリーグの方向性はいいのではないでしょうか」

 現在所属する横浜FMは、川崎Fをはじめ、湘南、横浜FCと3つのダービーマッチがあり、クラブとしても地域を巻き込みながらダービーを育てる課題に向き合っている。特に注目度が高いのが、この6年間、J1の覇権を二分してきた川崎Fとのゲームだろう。『BIG神奈川ダービー』と銘打たれた一戦を、どう育てていけばいいのか。

「何かしら新しいムーブメントを起こさないといけません。現代だからこそやれることもあるだろうし、歴史はそうやって、先人から作り上げていくものですよね。これまでのフロンターレとのダービーでも、F・マリノスのサポーターの雰囲気から、意識する相手なんだとも感じています。それこそ、エンタメの力を借りながら、関心のない人たちも巻き込んで、お祭りじゃないですけど、横浜と川崎の街と街の戦いに発展していくのが理想ではないでしょうか」

 宮市自身は横浜FMに加入してからの2年間、川崎Fとのダービーに出場する機会がなかった。6月10日の第17節・柏戦(〇4―3)で劇的な逆転決勝ゴールを奪うなど、長く苦しいリハビリの末、昨夏に負った右ヒザ前十字靱帯断裂から完全復活を印象付けている。今回のダービーは初出場する絶好のチャンスだろう。ただ、本人はあくまで控えめだ。「本当は取材的に『出たいです』と言ったほうがいいんでしょうけど、そこは監督が決めることです」と前置きした上で、こう本音を口にした。

「でもやっぱり一選手としてはピッチに立ちたいですよね。ファン・サポーターのみなさんが作ってくれる素晴らしい雰囲気の中、勝利を分かち合う瞬間がくれば、自分の人生の中でも忘れられない時間になるはずです」

 3度目の大ケガを乗り越えた宮市にとって、Jリーグで初めて所属した横浜FMはかけがえのないクラブになっている。

「僕はこのクラブに助けられました。何よりまたこうして現役としてプレーする気持ちにさせてくれた。そして、契約が切れる昨季には契約も延長してもらいました。(大ケガを負った直後の試合で)チームメイトがメッセージ付きのユニフォームを着てくれたり、ファン・サポーターの方も僕のユニフォームを掲げ、横断幕でも励ましてくれました。だからこそ、自分がこのクラブに在籍している間は、自分にできることなら、もう何でもやります。それでしか、もらった恩を返せないと思っています」

 5月下旬に復帰して以降、切り札的な役割で、再び存在感を高めつつある宮市。チームの顔として今季新たに背負った『23(ニッサン)番』が、注目度の高いダービーで眩い輝きを放つーー。そのことが、一番の恩返しとなる。

PROFILE◎みやいち・りょう/1992年12月14日生まれ、愛知県出身。181cm77kg。経歴:中京大中京高-フェイエノールト[オランダ]-アーセナル[イングランド]-ボルトン[イングランド]-ウィガン[イングランド]-アーセナル-トゥエンテ[オランダ]-ザンクトパウリ[ドイツ]-横浜FM


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