上写真=勝利の立役者となった伊藤敦樹。カメラマンのリクエストに応えてガッツポーズ(写真◎J .LEAGUE)
チームとしての強さを見せることができた
今季、リーグ戦4度目の逆転勝利に導き、埼玉スタジアムを大きく沸かせた浦和の伊藤は試合後、興奮冷めやらぬ口調で喜びを口にした。
「広島が強いのは分かっていましたけど、リーグ優勝するためには勝つしかなかった。今季の浦和はたとえ先に失点しても、逆転して勝つことが多いです。きょうもチームとしての強さを見せることができたと思います」
目を引いたのは、中盤から前線へダイナミックに飛び出していく機動力。運動量が自慢のボランチはゲーム終盤に差し掛かると、ぐっとギアを上げた。1点を追いかける72分、ペナルティーエリア近辺に顔を出し、酒井宏樹の同点ゴールを演出。本人も納得のアシストだった。
「良い形でゴール前に入っていけました。(大久保智明から)ボールを受ける前に、宏樹くんが走り出すのも見えていたので、良いタイミングでパスを出せました」
後半アディショナルタイムになっても、足は止まらなかった。右サイドの酒井からクロスボールが上がると、迷わずペナルティーエリア内に侵入。最後はブライアン・リンセンから折り返されたボールを左足でコンパクトに振り抜き、劇的な決勝ゴールをマークした(浦和2―1広島)。
「ブライアンと目が合ったので、落としてくれると信じていました。最後は気持ちで押し込みました」
満面の笑みを浮かべる表情には、充実感がにじんでいた。
視察のために会場に足を運んでいた森保一監督も24歳の働きぶりに目を細めていた。試合後、報道陣の前で伊藤について聞かれると、思わず口元を緩めた。
「(今後、招集の)チャンスはあると思っています」
6月シリーズの日本代表には選ばれなかったものの、そう遠くない場所にいることを窺わせた。今季はすでに2ゴールをマーク。通算3度目の優勝を果たしたACLでは攻守両面で強度の高いプレーを見せ、国際舞台で戦えることも証明した。185センチの大型ボランチは、意欲にあふれている。
「日本代表は常に目指している場所。今回はメンバーに選ばれなかったですが、浦和で結果を出し続けていれば、きっとチャンスは来ると思っています」
浦和の新しい象徴になりつつある下部組織出身の生え抜きは、ここからさらに大きくなっていくつもりだ。
取材◎杉園昌之