成績不振を理由にネルシーニョ監督が退任し、井原正巳ヘッドコーチが監督に就任して臨んだ20日のヴィッセル神戸戦。柏レイソルは先制を許すも追いつき、1−1で引き分けた。勝利こそ手にできなかったが、新チームはポジティブな印象を残した。井原新監督はこれから柔軟に戦えるチームを目指していく。

上写真=試合後、サポーターに挨拶する柏の選手たち(写真◎J .LEAGUE)

手応えを感じた勝ち点1

 柏レイソルは2度目の監督就任で5シーズン目を迎えていたネルシーニョ監督と契約を解き、ヘッドコーチを務めていた井原正巳を後任に据えてJ1第14節のヴィッセル神戸戦に臨んだ。ホーム、三協フロンテア柏スタジアムに満員の観客を集めて行われた新監督の初戦は、24分に得点王レースでトップを行く大迫勇也に今季10点目となるゴールを決められて先制された。だが、後半に入って66分に相手オウンゴールを誘って追い付き、その後は逆転のチャンスを生かせずに1-1で引き分けた。

 試合後、井原監督は「選手たちは戦うというところを90分表現してくれました。勝ち点3を取りたかったですが、(首位チーム相手の)この勝ち点1をポジティブにとらえて次の試合に向けた準備を進めていきたいと思います」と結果には満足していないものの手ごたえを感じていた。

 言葉通り終始試合を優勢に進めたのは柏だった。神戸が先制点のあと徐々に全体のラインが間延びしてしまったこともあり、果敢なプレスから球際で勝ち、ボールを支配して攻めた。特に後半は押し込んで、58分にフロートを投入すると攻撃の迫力が増し、67分にフロート、80分に細谷真大、その2分後には再びフロートが決定的な得点チャンスを迎えながらいずれもシュートを外してしまった。シュート数で13対3、うち枠内が5対1、CKは8対1と記録上でも神戸を圧倒した。

 この日の柏はネルシーニョ体制最後の試合となった前節の横浜FC 戦から左サイドバック(SB)の三丸拡に代わって川口尚紀が入り右SBに入り、右SBだった片山瑛一が左に回っている。ボランチの椎橋慧也に代わって右サイドMFだった戸嶋祥郎がボランチを務め、右MFには山田康太が入った。メンバー的には2人が代わったのみ。システムは4バックにボランチが2人、両サイドMFと、マテウス・サビオがトップ下、細谷が1トップの4-2-3-1と変わらなかった。

井原監督は「(4日間の)準備期間が短く、大きく変えることはできないのでネルシーニョ監督の時の良いところは残しながら、徐々に自分の色を出していきたい」と話し、戦術のベースは継続しつつハードワークや戦う部分を強調して士気を高め、この日のパフォーマンスにつなげた。監督交代というショック療法が効いた格好だ。

ただ、これは即効性はあっても継続性を期待するのは難しい面もある。結果が出なければすぐに効果は薄れていく。この日のパフォーマンスを継続するためにも変化は必要だろう。そもそも今季の柏はネルシーニョ前監督がこれまでよりボールを支配する攻撃的なサッカーを目指してスタートした。その象徴が高嶺朋樹をアンカーに山田、仙頭啓矢が攻撃的なポジションを取る新加入の3人による中盤で、テクニックがあり攻撃のアイディアを備える選手を並べた4-3-3でスタートしている。だが、開幕から2試合続けて引き分けると、勝利にこだわるネルシーニョ前監督は、守備を固めて縦に早い従来のやり方に戻してしまう。一時的な対策のつもりだったのかもしれないが、キャンプから積み上げてきたプレーを捨ててしまったことでチームの方向性に迷いが生まれたことは否定できないだろう。その結果が勝ち星から見放されての低迷となった。

井原監督は「カウンターができるときはカウンターで攻める。カウンターと、保持した形でも点を取れる。この両方をできるチームが強いと思っています」と語り、ボールを握りながらカウンターもできる、臨機応変なチーム作りを目指している。初戦でその片鱗は見せた。守備の安定はさらに必要だろうが、その辺りは日本サッカー史上でも有数の優れたDFだった新監督の得意とするところ。アビスパ福岡で指揮を執った時期にもそれは感じさせていた。

 試合後にはサポーターから大きな拍手と声援が送られて、新体制のスタートは「ポジティブ」に受け止められていた。今後の巻き返しに注目したい。

取材◎国吉好弘

画像: 就任後初戦で手応えを感じたと語った井原正巳監督(写真◎J .LEAGUE)

就任後初戦で手応えを感じたと語った井原正巳監督(写真◎J .LEAGUE)


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