上写真=高木善朗は完全復活へ一歩ずつ進んでいる(写真◎J.LEAGUE)
■2023年4月29日 明治安田生命J1リーグ第10節(@味スタ/観衆32,181人)
FC東京 2-1 新潟
得点:(F)仲川輝人、ディエゴ・オリヴェイラ
(新)伊藤涼太郎
松橋力蔵監督は「賢さを期待」
味の素スタジアムは、高木善朗にとっては「ホーム」に近い場所だ。プロキャリアの最初のクラブ、東京ヴェルディの一員として本拠地にしていたからだ。
J1では清水エスパルス時代の2015年以来、久々にここに帰ってきて「懐かしい」と話したものの、口が重い。昨季の大ケガから戻ってきてこれが公式戦3試合目、この日も1点ビハインドの63分からピッチに立って同点、逆転への刺客として送り込まれたが、かなわなかった。悔しくて悔しくて悔しくて、なかなか言葉が出てこない。
松橋力蔵監督はFWグスタボ・ネスカウ、MF小見洋太とともに高木を投入している。選手の並びを4-2-3-1から4-3-3に変更した。中盤は高宇洋を底に、その前に伊藤涼太郎と高木を並び立たせる構図だ。狙いは細やかだった。
「彼が入ることによって前線の距離感が非常に良くなりますし、自分が関わらずともほかの選手に有利なものを作り上げる、そういう賢さを期待していました。あとは、ピッチの中で起きていることに対して中心になって、伊藤(涼太郎)選手との関係でうまく相手を引き寄せられれば中央が開くかなと。出来はまだまだですけれど、試合も多くこなせていない中で徐々に良くなっています」
2022年に松橋監督が就任して最初に選んだのが、高木と伊藤という才能がお互いを引き出し合うように促した4-3-3だった。そのときは先発で並んだのは3試合のみにとどまり、のちに4-2-3-1で戦って勝ち点を積み上げていったのだが、1点を追いかけるこの場面でおよそ1年ぶりに「復活」させたわけだ。
高木自身はさらに幅広く自らにタスクを課した。「ディフェンスのときにはボランチに横並びになって、攻めて伊藤選手に近づく」とマルチな役割を意識した。
「あとは、最後の方はやっぱり(グスタボ・)ネスカウの近くでプレーする感じになりました」
189センチのグスタボ・ネスカウをターゲットに早いタイミングで送り込むクロスも増やし、その近くでセカンドボールを拾ってフィニッシュへ、という青写真だ。だが、そのクロスの精度も欠いて、高木のシュートは82分のループ気味のミドルシュート1本に終わっている。
「個人としては課題だらけ。ゴール前で得点につながるような仕事というか、その空気感も出せなかった。反省点が多いですし、セカンドボールも自分自身がもっとちゃんと拾えないといけない」
視線が宙をさまよい、唇を噛むような仕草が、悔しさをストレートに示す。
「なんか、まあ悔しいですけど、でもしっかり受け入れて、もうちょっとコンディションを上げなきゃいけないなと思います。いや、コンディションなのか、試合勘なのかはよくわからないですけど、それを含めてちゃんとまたしっかり戦えるようにしたい」
新潟が披露する鮮やかなコンビネーションと急所を突くスピード満載の攻撃は、各クラブから称賛され、その分、大きく警戒もされている。だがこれで、今季2度目の連敗だという事実は突きつけられる。
それでも去り際は、いつもの清々しい笑顔。悪い流れを断ち切る最も効果的な一手として、「高木善朗の完全復活」を待ち望む声は多い。