アルビレックス新潟は「恩師」を打ち破れなかった。4月29日のJ1第10節、アルビレックス新潟は、2020年から2シーズンに渡って指揮したアルベル監督が現在率いるFC東京と対戦し、1-2で敗れた。昨年の大ケガから戻ってきた高木善朗は、かつての監督の前で何もできなかった悔しさを隠さなかった。

上写真=高木善朗は完全復活へ一歩ずつ進んでいる(写真◎J.LEAGUE)

■2023年4月29日 明治安田生命J1リーグ第10節(@味スタ/観衆32,181人)
FC東京 2-1 新潟
得点:(F)仲川輝人、ディエゴ・オリヴェイラ
   (新)伊藤涼太郎

松橋力蔵監督は「賢さを期待」

 味の素スタジアムは、高木善朗にとっては「ホーム」に近い場所だ。プロキャリアの最初のクラブ、東京ヴェルディの一員として本拠地にしていたからだ。

 J1では清水エスパルス時代の2015年以来、久々にここに帰ってきて「懐かしい」と話したものの、口が重い。昨季の大ケガから戻ってきてこれが公式戦3試合目、この日も1点ビハインドの63分からピッチに立って同点、逆転への刺客として送り込まれたが、かなわなかった。悔しくて悔しくて悔しくて、なかなか言葉が出てこない。

 松橋力蔵監督はFWグスタボ・ネスカウ、MF小見洋太とともに高木を投入している。選手の並びを4-2-3-1から4-3-3に変更した。中盤は高宇洋を底に、その前に伊藤涼太郎と高木を並び立たせる構図だ。狙いは細やかだった。

「彼が入ることによって前線の距離感が非常に良くなりますし、自分が関わらずともほかの選手に有利なものを作り上げる、そういう賢さを期待していました。あとは、ピッチの中で起きていることに対して中心になって、伊藤(涼太郎)選手との関係でうまく相手を引き寄せられれば中央が開くかなと。出来はまだまだですけれど、試合も多くこなせていない中で徐々に良くなっています」

 2022年に松橋監督が就任して最初に選んだのが、高木と伊藤という才能がお互いを引き出し合うように促した4-3-3だった。そのときは先発で並んだのは3試合のみにとどまり、のちに4-2-3-1で戦って勝ち点を積み上げていったのだが、1点を追いかけるこの場面でおよそ1年ぶりに「復活」させたわけだ。

 高木自身はさらに幅広く自らにタスクを課した。「ディフェンスのときにはボランチに横並びになって、攻めて伊藤選手に近づく」とマルチな役割を意識した。

「あとは、最後の方はやっぱり(グスタボ・)ネスカウの近くでプレーする感じになりました」

 189センチのグスタボ・ネスカウをターゲットに早いタイミングで送り込むクロスも増やし、その近くでセカンドボールを拾ってフィニッシュへ、という青写真だ。だが、そのクロスの精度も欠いて、高木のシュートは82分のループ気味のミドルシュート1本に終わっている。

「個人としては課題だらけ。ゴール前で得点につながるような仕事というか、その空気感も出せなかった。反省点が多いですし、セカンドボールも自分自身がもっとちゃんと拾えないといけない」

 視線が宙をさまよい、唇を噛むような仕草が、悔しさをストレートに示す。

「なんか、まあ悔しいですけど、でもしっかり受け入れて、もうちょっとコンディションを上げなきゃいけないなと思います。いや、コンディションなのか、試合勘なのかはよくわからないですけど、それを含めてちゃんとまたしっかり戦えるようにしたい」

 新潟が披露する鮮やかなコンビネーションと急所を突くスピード満載の攻撃は、各クラブから称賛され、その分、大きく警戒もされている。だがこれで、今季2度目の連敗だという事実は突きつけられる。

 それでも去り際は、いつもの清々しい笑顔。悪い流れを断ち切る最も効果的な一手として、「高木善朗の完全復活」を待ち望む声は多い。


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